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太陽に挑んだ男

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(だ、だれか...)



 空では灼熱の太陽が、地にいる者を焦がそうとして燃え盛り、その意図を知ってか、辺りには人影がない。
そんな中、歩いているのは僕だけだ。
そう、僕は、無謀にも灼熱の太陽に挑んだ愚か者だ。



でも、仕方なかったんだ。
 僕だって、本当はこんなことしたくない。
だけど、僕にはその意志を通す事など出来ない。



 (た、助けてくれ、誰か...!)



 僕は今一度まわりを見渡した。
だけど、人っ子一人いない。



 火傷しそうな温度に熱せらた空気がゆらゆらと揺れる。
 俺は、今すぐにでもおまえを好きなように出来るんだと、笑っているように思えた。



 (も、もうダメだ!)



 僕は、その場で不覚にも意識を手放した。



 ***



 「宮内...何やってんだよ、おまえ...」

 「......すみません。」



 僕は熱中症で運ばれた。
 我が社で使う野菜の取引をするために、農家を訪ねる途中で、僕は熱中症にやられてしまったのだ。
 折しもその日は、観測史上、最高気温を記録した日。
 約束の場所までは延々と畑が続くばかりで、日陰もなければ、自販機の一台もなかった。
そんな中、僕はペットボトル飲料の一本も持たずに出てしまったのだ。



 幸いにも通りがかった農家の人が見つけてくれたからよかったが、そうでなければ、僕は今ここにはいなかったかもしれない。



あの最高に暑い日を...
ゆらゆら揺らめく陽炎を僕は一生忘れない。



そして、ペットボトルのスポーツドリンクを常に持ち歩くことも、深く心に刻んだ。

 
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