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特別な日
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(よしっ!頑張るぞ!)
私は、日記帳を見て、気合いを込めた。
(大丈夫、大丈夫、きっとうまくいく…!)
自分に言い聞かせながら、彼との待ち合わせの場所に向かった。
本当は、もっとロマンチックな場所が良かったのだけど、彼が今日はどうしてもバイキングで美味しいものをお腹いっぱい食べたいって言うから、仕方ない。
その代わり、ちょっと張り込んで有名なパトリツィアホテルのバイキングにした。
背の高い彼は人混みの中でもすぐに目に付く。
「翔くーん!」
翔君は、すぐに私に気付いて手を振り返してくれた。
まずは、映画を見る。
彼の趣味に合わせて、今日はアクション映画だ。
彼は、スクリーンに釘付けだけど、私は気もそぞろで全く頭に入らない。
「あぁ、面白かった!」
「そ、そうだね。」
私は愛想笑いを浮かべる。
次は、バイキング。
今日はホテルのバイキングだから、ロケーションはけっこう良かった。
32階から眺める夜景は、まさに光の宝石箱だし、レストランの中も高級な家具で、食器も高そうなものだった。
「おぉっ!さすがに高いだけのことはあるな。
このステーキ、溶ける!」
「そ、そう?良かったね。」
肉の味もなんだかよくわからない。
だって、私は今日…
「ねぇ、翔君、ワインもっと飲む?」
「え?俺、ワインより…」
「もらってくるね!」
私はその場から立ち上がった。
彼には、少々、酔ってもらった方が良いから。
私もお酒の力を借りよう!
美味しい料理をいっぱい食べて、お酒もそこそこ飲んで…
彼が、満足した顔を見せた時、私は勇気を振り絞って話した。
「翔君、気付いてた?
私達、付き合い始めて今日で丸2年なんだよ。」
「そうか。確か、梅雨の頃だったっていうのは覚えてたよ。」
「二年も付き合えば、私のこともわかってくれたよね?
ね?……結婚しない?」
「えっ!?」
彼は目を丸くして、私をみつめた。
どんな返事が来るのか内心とても怖かったけど、私はそんなことなどおくびにも出さず、優雅に笑ってみせた。
「……そうだよな。
そろそろ結婚しても良い時期だよな。」
「えっ?そ、それじゃあ…」
翔君は、ゆっくりと頷いた。
それを見て、私は全身の緊張が解けた想いだった。
「でも、こういうことはもっとロマンチックなところが良いんじゃないの?
なんで、バイキングで言うかな?」
「十分ロマンチックじゃない。ほら、見て、この夜景。
しかも、ここは天下のパトリツィアホテルだよ。」
「確かにそうだけど…」
翔君は苦笑いを浮かべる。
*
(やった!今回もうまくいったよ!)
私は日記帳を抱き締めた。
数年前から始めた、私のこの日記帳は、少しばかり使い方が変わってる。
起きたことを書くんじゃなくて、これから起きてほしいこと…つまりは目標みたいなものを現実的に書く日記帳なんだ。
『6月3日。
今日は、翔君とデート。
付き合い始めて丸二年の記念日だけど、翔君はきっと覚えてないだろう。
まずは翔君の好きなアクション映画を見て、それからパトリツィアホテルのバイキングに行った。
さすがに一流のホテルで、とても雰囲気も良かったし、最高に美味しかった。
張り込んだだけのことはある。
お腹いっぱい食べた後、私は翔君にプロポーズをして、翔君はそれを快く受けてくれた。』
翔君と付き合うことも、この日記に書いたし、今まで書いたことはほぼ全部現実となっている。
いや、私が現実とさせている。
(次は、結婚式の日記ね!)
それを書くのが、今から楽しみでならない。
私は、日記帳を見て、気合いを込めた。
(大丈夫、大丈夫、きっとうまくいく…!)
自分に言い聞かせながら、彼との待ち合わせの場所に向かった。
本当は、もっとロマンチックな場所が良かったのだけど、彼が今日はどうしてもバイキングで美味しいものをお腹いっぱい食べたいって言うから、仕方ない。
その代わり、ちょっと張り込んで有名なパトリツィアホテルのバイキングにした。
背の高い彼は人混みの中でもすぐに目に付く。
「翔くーん!」
翔君は、すぐに私に気付いて手を振り返してくれた。
まずは、映画を見る。
彼の趣味に合わせて、今日はアクション映画だ。
彼は、スクリーンに釘付けだけど、私は気もそぞろで全く頭に入らない。
「あぁ、面白かった!」
「そ、そうだね。」
私は愛想笑いを浮かべる。
次は、バイキング。
今日はホテルのバイキングだから、ロケーションはけっこう良かった。
32階から眺める夜景は、まさに光の宝石箱だし、レストランの中も高級な家具で、食器も高そうなものだった。
「おぉっ!さすがに高いだけのことはあるな。
このステーキ、溶ける!」
「そ、そう?良かったね。」
肉の味もなんだかよくわからない。
だって、私は今日…
「ねぇ、翔君、ワインもっと飲む?」
「え?俺、ワインより…」
「もらってくるね!」
私はその場から立ち上がった。
彼には、少々、酔ってもらった方が良いから。
私もお酒の力を借りよう!
美味しい料理をいっぱい食べて、お酒もそこそこ飲んで…
彼が、満足した顔を見せた時、私は勇気を振り絞って話した。
「翔君、気付いてた?
私達、付き合い始めて今日で丸2年なんだよ。」
「そうか。確か、梅雨の頃だったっていうのは覚えてたよ。」
「二年も付き合えば、私のこともわかってくれたよね?
ね?……結婚しない?」
「えっ!?」
彼は目を丸くして、私をみつめた。
どんな返事が来るのか内心とても怖かったけど、私はそんなことなどおくびにも出さず、優雅に笑ってみせた。
「……そうだよな。
そろそろ結婚しても良い時期だよな。」
「えっ?そ、それじゃあ…」
翔君は、ゆっくりと頷いた。
それを見て、私は全身の緊張が解けた想いだった。
「でも、こういうことはもっとロマンチックなところが良いんじゃないの?
なんで、バイキングで言うかな?」
「十分ロマンチックじゃない。ほら、見て、この夜景。
しかも、ここは天下のパトリツィアホテルだよ。」
「確かにそうだけど…」
翔君は苦笑いを浮かべる。
*
(やった!今回もうまくいったよ!)
私は日記帳を抱き締めた。
数年前から始めた、私のこの日記帳は、少しばかり使い方が変わってる。
起きたことを書くんじゃなくて、これから起きてほしいこと…つまりは目標みたいなものを現実的に書く日記帳なんだ。
『6月3日。
今日は、翔君とデート。
付き合い始めて丸二年の記念日だけど、翔君はきっと覚えてないだろう。
まずは翔君の好きなアクション映画を見て、それからパトリツィアホテルのバイキングに行った。
さすがに一流のホテルで、とても雰囲気も良かったし、最高に美味しかった。
張り込んだだけのことはある。
お腹いっぱい食べた後、私は翔君にプロポーズをして、翔君はそれを快く受けてくれた。』
翔君と付き合うことも、この日記に書いたし、今まで書いたことはほぼ全部現実となっている。
いや、私が現実とさせている。
(次は、結婚式の日記ね!)
それを書くのが、今から楽しみでならない。
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