194 / 401
特別な日
1
しおりを挟む
(よしっ!頑張るぞ!)
私は、日記帳を見て、気合いを込めた。
(大丈夫、大丈夫、きっとうまくいく…!)
自分に言い聞かせながら、彼との待ち合わせの場所に向かった。
本当は、もっとロマンチックな場所が良かったのだけど、彼が今日はどうしてもバイキングで美味しいものをお腹いっぱい食べたいって言うから、仕方ない。
その代わり、ちょっと張り込んで有名なパトリツィアホテルのバイキングにした。
背の高い彼は人混みの中でもすぐに目に付く。
「翔くーん!」
翔君は、すぐに私に気付いて手を振り返してくれた。
まずは、映画を見る。
彼の趣味に合わせて、今日はアクション映画だ。
彼は、スクリーンに釘付けだけど、私は気もそぞろで全く頭に入らない。
「あぁ、面白かった!」
「そ、そうだね。」
私は愛想笑いを浮かべる。
次は、バイキング。
今日はホテルのバイキングだから、ロケーションはけっこう良かった。
32階から眺める夜景は、まさに光の宝石箱だし、レストランの中も高級な家具で、食器も高そうなものだった。
「おぉっ!さすがに高いだけのことはあるな。
このステーキ、溶ける!」
「そ、そう?良かったね。」
肉の味もなんだかよくわからない。
だって、私は今日…
「ねぇ、翔君、ワインもっと飲む?」
「え?俺、ワインより…」
「もらってくるね!」
私はその場から立ち上がった。
彼には、少々、酔ってもらった方が良いから。
私もお酒の力を借りよう!
美味しい料理をいっぱい食べて、お酒もそこそこ飲んで…
彼が、満足した顔を見せた時、私は勇気を振り絞って話した。
「翔君、気付いてた?
私達、付き合い始めて今日で丸2年なんだよ。」
「そうか。確か、梅雨の頃だったっていうのは覚えてたよ。」
「二年も付き合えば、私のこともわかってくれたよね?
ね?……結婚しない?」
「えっ!?」
彼は目を丸くして、私をみつめた。
どんな返事が来るのか内心とても怖かったけど、私はそんなことなどおくびにも出さず、優雅に笑ってみせた。
「……そうだよな。
そろそろ結婚しても良い時期だよな。」
「えっ?そ、それじゃあ…」
翔君は、ゆっくりと頷いた。
それを見て、私は全身の緊張が解けた想いだった。
「でも、こういうことはもっとロマンチックなところが良いんじゃないの?
なんで、バイキングで言うかな?」
「十分ロマンチックじゃない。ほら、見て、この夜景。
しかも、ここは天下のパトリツィアホテルだよ。」
「確かにそうだけど…」
翔君は苦笑いを浮かべる。
*
(やった!今回もうまくいったよ!)
私は日記帳を抱き締めた。
数年前から始めた、私のこの日記帳は、少しばかり使い方が変わってる。
起きたことを書くんじゃなくて、これから起きてほしいこと…つまりは目標みたいなものを現実的に書く日記帳なんだ。
『6月3日。
今日は、翔君とデート。
付き合い始めて丸二年の記念日だけど、翔君はきっと覚えてないだろう。
まずは翔君の好きなアクション映画を見て、それからパトリツィアホテルのバイキングに行った。
さすがに一流のホテルで、とても雰囲気も良かったし、最高に美味しかった。
張り込んだだけのことはある。
お腹いっぱい食べた後、私は翔君にプロポーズをして、翔君はそれを快く受けてくれた。』
翔君と付き合うことも、この日記に書いたし、今まで書いたことはほぼ全部現実となっている。
いや、私が現実とさせている。
(次は、結婚式の日記ね!)
それを書くのが、今から楽しみでならない。
私は、日記帳を見て、気合いを込めた。
(大丈夫、大丈夫、きっとうまくいく…!)
自分に言い聞かせながら、彼との待ち合わせの場所に向かった。
本当は、もっとロマンチックな場所が良かったのだけど、彼が今日はどうしてもバイキングで美味しいものをお腹いっぱい食べたいって言うから、仕方ない。
その代わり、ちょっと張り込んで有名なパトリツィアホテルのバイキングにした。
背の高い彼は人混みの中でもすぐに目に付く。
「翔くーん!」
翔君は、すぐに私に気付いて手を振り返してくれた。
まずは、映画を見る。
彼の趣味に合わせて、今日はアクション映画だ。
彼は、スクリーンに釘付けだけど、私は気もそぞろで全く頭に入らない。
「あぁ、面白かった!」
「そ、そうだね。」
私は愛想笑いを浮かべる。
次は、バイキング。
今日はホテルのバイキングだから、ロケーションはけっこう良かった。
32階から眺める夜景は、まさに光の宝石箱だし、レストランの中も高級な家具で、食器も高そうなものだった。
「おぉっ!さすがに高いだけのことはあるな。
このステーキ、溶ける!」
「そ、そう?良かったね。」
肉の味もなんだかよくわからない。
だって、私は今日…
「ねぇ、翔君、ワインもっと飲む?」
「え?俺、ワインより…」
「もらってくるね!」
私はその場から立ち上がった。
彼には、少々、酔ってもらった方が良いから。
私もお酒の力を借りよう!
美味しい料理をいっぱい食べて、お酒もそこそこ飲んで…
彼が、満足した顔を見せた時、私は勇気を振り絞って話した。
「翔君、気付いてた?
私達、付き合い始めて今日で丸2年なんだよ。」
「そうか。確か、梅雨の頃だったっていうのは覚えてたよ。」
「二年も付き合えば、私のこともわかってくれたよね?
ね?……結婚しない?」
「えっ!?」
彼は目を丸くして、私をみつめた。
どんな返事が来るのか内心とても怖かったけど、私はそんなことなどおくびにも出さず、優雅に笑ってみせた。
「……そうだよな。
そろそろ結婚しても良い時期だよな。」
「えっ?そ、それじゃあ…」
翔君は、ゆっくりと頷いた。
それを見て、私は全身の緊張が解けた想いだった。
「でも、こういうことはもっとロマンチックなところが良いんじゃないの?
なんで、バイキングで言うかな?」
「十分ロマンチックじゃない。ほら、見て、この夜景。
しかも、ここは天下のパトリツィアホテルだよ。」
「確かにそうだけど…」
翔君は苦笑いを浮かべる。
*
(やった!今回もうまくいったよ!)
私は日記帳を抱き締めた。
数年前から始めた、私のこの日記帳は、少しばかり使い方が変わってる。
起きたことを書くんじゃなくて、これから起きてほしいこと…つまりは目標みたいなものを現実的に書く日記帳なんだ。
『6月3日。
今日は、翔君とデート。
付き合い始めて丸二年の記念日だけど、翔君はきっと覚えてないだろう。
まずは翔君の好きなアクション映画を見て、それからパトリツィアホテルのバイキングに行った。
さすがに一流のホテルで、とても雰囲気も良かったし、最高に美味しかった。
張り込んだだけのことはある。
お腹いっぱい食べた後、私は翔君にプロポーズをして、翔君はそれを快く受けてくれた。』
翔君と付き合うことも、この日記に書いたし、今まで書いたことはほぼ全部現実となっている。
いや、私が現実とさせている。
(次は、結婚式の日記ね!)
それを書くのが、今から楽しみでならない。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!
白夢
ファンタジー
何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。
そう言われて、異世界に転生することになった。
でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。
どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。
だからわたしは旅に出た。
これは一人の幼女と小さな幻獣の、
世界なんて救わないつもりの放浪記。
〜〜〜
ご訪問ありがとうございます。
可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。
ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。
お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします!
23/01/08 表紙画像を変更しました
夢の硝子玉
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
少年達がみつけた5色の硝子玉は願い事を叶える不思議な硝子玉だった…
ある時、エリオットとフレイザーが偶然にみつけた硝子玉。
その不思議な硝子玉のおかげで、二人は見知らぬ世界に飛ばされた。
そこは、魔法が存在し、獣人と人間の住むおかしな世界だった。
※表紙は湖汐涼様に描いていただきました。
虚弱高校生が世界最強となるまでの異世界武者修行日誌
力水
ファンタジー
楠恭弥は優秀な兄の凍夜、お転婆だが体が弱い妹の沙耶、寡黙な父の利徳と何気ない日常を送ってきたが、兄の婚約者であり幼馴染の倖月朱花に裏切られ、兄は失踪し、父は心労で急死する。
妹の沙耶と共にひっそり暮そうとするが、倖月朱花の父、竜弦の戯れである条件を飲まされる。それは竜弦が理事長を務める高校で卒業までに首席をとること。
倖月家は世界でも有数の財閥であり、日本では圧倒的な権勢を誇る。沙耶の将来の件まで仄めかされれば断ることなどできようもない。
こうして学園生活が始まるが日常的に生徒、教師から過激ないびりにあう。
ついに《体術》の実習の参加の拒否を宣告され途方に暮れていたところ、自宅の地下にある門を発見する。その門は異世界アリウスと地球とをつなぐ門だった。
恭弥はこの異世界アリウスで鍛錬することを決意し冒険の門をくぐる。
主人公は高い技術の地球と資源の豊富な異世界アリウスを往来し力と資本を蓄えて世界一を目指します。
不幸のどん底にある人達を仲間に引き入れて世界でも最強クラスの存在にしたり、会社を立ち上げて地球で荒稼ぎしたりする内政パートが結構出てきます。ハーレム話も大好きなので頑張って書きたいと思います。また最強タグはマジなので嫌いな人はご注意を!
書籍化のため1~19話に該当する箇所は試し読みに差し換えております。ご了承いただければ幸いです。
一人でも読んでいただければ嬉しいです。
キャンピングカーで往く異世界徒然紀行
タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》
【書籍化!】
コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。
早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。
そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。
道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが…
※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜
※カクヨム様でも投稿をしております
ある日、近所の少年と異世界に飛ばされて保護者になりました。
トロ猫
ファンタジー
仕事をやめ、なんとなく稼ぎながら暮らしていた白川エマ(39)は、買い物帰りに偶然道端で出会った虐待された少年と共に異世界に飛ばされてしまう。
謎の光に囲まれ、目を開けたら周りは銀世界。
「え?ここどこ?」
コスプレ外国人に急に向けられた剣に戸惑うも一緒に飛ばされた少年を守ろうと走り出すと、ズボンが踝まで落ちてしまう。
――え? どうして
カクヨムにて先行しております。
三百字 -三百字の短編小説集-
福守りん
ライト文芸
三百字以内であること。
小説であること。
上記のルールで書かれた小説です。
二十五才~二十八才の頃に書いたものです。
今だったら書けない(書かない)ような言葉がいっぱい詰まっています。
それぞれ独立した短編が、全部で二十話です。
一話ずつ更新していきます。
料理がしたいので、騎士団の任命を受けます!
ハルノ
ファンタジー
過労死した主人公が、異世界に飛ばされてしまいました
。ここは天国か、地獄か。メイド長・ジェミニが丁寧にもてなしてくれたけれども、どうも味覚に違いがあるようです。異世界に飛ばされたとわかり、屋敷の主、領主の元でこの世界のマナーを学びます。
令嬢はお菓子作りを趣味とすると知り、キッチンを借りた女性。元々好きだった料理のスキルを活用して、ジェミニも領主も、料理のおいしさに目覚めました。
そのスキルを生かしたいと、いろいろなことがあってから騎士団の料理係に就職。
ひとり暮らしではなかなか作ることのなかった料理も、大人数の料理を作ることと、満足そうに食べる青年たちの姿に生きがいを感じる日々を送る話。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」を使用しています。
Gift
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
リクエストやら記念に書いたSS集です。
すべて、数ページ程の短編ですが、続き物になっているお話もあります。
私や他のクリエイター様のオリキャラを使ったものや、私のお話の番外編もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる