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セカンドチャンス

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「な、渚!」

 「淳、久しぶりだな!」

それは偶然の再会だった。
まさか、こんなところで渚に会うなんて思ってもみなかったから、僕はたいそう驚いた。



 「渚、どうして?」

 「戻って来たんだ。」

 「戻って…?」

 「……立ち話もなんだし、ちょっとお茶でも飲まないか?」

 「え?そ、そうだね。」

 僕達は、近くのファミレスに向かった。



 「久しぶりだな。」

 「そうだね。確か、もう四年…くらいかな?」

 「良く覚えてるんだな。」

そう言うと、渚は、ブラックのコーヒーをゆっくりと飲む。
ぼんやりとしたその瞳は、どこか寂しそうな気がした。



 「あ…旦那さんは元気?」

 「……別れた。」

 「え…?」

 「別れたから…ここに戻って来た。」

 「そ、そうなんだ……」

 僕らの間に、気まずい沈黙が流れる。
どうしよう…なんて言えば良い?
 考えれば考える程、気持ちばかりが焦って、余計に言葉が出ない。



 「あ、ちょっと待ってて。」

 僕は立ち上がり、走り出した。
 突然、あることを思いついたからだ。



 「渚…これ。」

 「え?まさか…チョコ?」

 「うん。良くわかったね。」

 「誰だってわかるだろ。」

ハートのちりばめられた包装紙、しかも、今日はバレンタインデー。
 渚がそう言うのも当然だった。



 「それにしても懲りないな。」

いかにも呆れた口調で、渚は言葉を続けた。



 「僕、嬉しいよ。
 久しぶりに、渚にチョコをあげられて。」

 「だ~か~ら~…
バレンタインデーは、女が男にチョコをあげる日だって、もう何べん言わせるんだよ。」

 「良いじゃない。
 子供の頃からやってることだし。」



 女の子なのに、力も強いし運動神経も良くて、さばさばしてて頼りになって…
僕は子供の頃からそんな渚のことが大好きだった。
バレンタインデーというイベントがあると知った時、僕はおこずかいでチョコを買った。
 渚は、その時もさっきと同じことを言ったけど、僕はそれでも毎年、チョコを贈り続けた。



 渚は、社会人になると都会に出て行った。
それでも、僕は郵便でチョコを贈り続けた。
だけど…渚は突然結婚してしまった。
 僕の全く知らない人と…



渚は、僕がチョコをあげてたことを、特に深い意味とはとらえてなかったと思うけど…
でも、僕は本気だったんだ。
 僕は、渚のことが好きだったから、チョコをあげてた。
だけど、僕のそんな気持ちは渚には全然伝わってなかった。
 僕自身、勇気がなくて、はっきりとは言えなかったことが悔やまれてならなかった。



 今度こそははっきりと言おう…!
 一度は諦めた渚が、戻って来たんだから。
 今度こそは、他の誰かに取られないように…
勇気を出して、このチャンスに賭けるんだ!
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