1ページ劇場③

ルカ(聖夜月ルカ)

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ナマケモノ

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『あけおめ、ことよろ。
 俺は、予定通り、寝正月を満喫中~』

 年賀状代わりの年賀メールが届いた。
それは、彼氏のトシからのもの。
まぁ、こんなものでも送ってくれるだけでも、今年はまだマシだ。



 仕事には精力的に力を注いでるトシは、休みともなると途端に別人格になる。
 本人は、バリバリ働いてる反動って言ってるけど、休みに家にいると、本当に何もしたくなくなるらしい。
 昨年は年賀メールどころか、こっちがメールを送ろうが電話をかけようが全く無視で、そのことで私がもう別れるとぶち切れ、修羅場になった。
だからこそ、今年は年賀メールを送ってよこしたんだろう。



こんな彼氏だから、ロマンチックなデートなんてなかなか出来ない。
 平日の夜に会う時はまだマシだけど、休みともなるとまず家から連れ出すことからして大変だから。
 年末の休みだって、私が彼の家に行って一緒にテレビを見て喋ってただけ。
お正月も、寝正月する!外出はしない!と断言された。



 「トシ~、来たよ~」



だから、私はまたトシの家に向かった。
 本当なら一緒に初詣に行きたいところだけど、そんなの誘ったっていやだって言うに決まってる。



 「あ~…美沙…やっぱり来たんだ。」

トシは宣言通り、パジャマを着てベッドにいた。



 「とりあえず、あけおめ。
ねぇ、何か食べたの?」

 「う…ん、まだ。」

 「お腹減ってないの?」

 「減ってるけど、作るの面倒だから…」

 「……そうだと思った。」

そんなこと、本当は聞かなくてもわかってた。
いつだってそうなんだから。



 私は、キッチンに向かい、持って来た肉まんを温めた。
 温まった肉まんは、とても良いにおいだ。



 「…え?正月なのに、なんで肉まん?」

 「お母さんに作り方、教わったんだ。
お母さん直伝の味だから食べてみて。」

トシはふーふーと息を吹きかけ、あつあつの肉まんを頬張った。



 「マジ?これ、マジで美沙が作ったのか?」

 「そうだよ。生地もちゃんと作ったんだから…
どう?美味しい?」

 「めっちゃうまいんですけど!
コンビニのよりうまいよ!」

その言葉に、私は満足する。



 今日はまたきっと、二人でテレビを見て他愛ない会話をするだけだろうけど…
初詣に行けなくても、つまらないお家デートでも、やっぱり私はトシのことが好きだから…

 
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