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みかん
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(あぁ…疲れた……)
ポストに原稿を落とすと、ほっとして全身の力が抜けるようだった。
投稿小説の締め切りが迫り、ここのところ、連休だったこともあって、徹夜で書き続けていた。
その甲斐あって、ようやく締め切りには間に合ったものの、疲れは半端ない。
だけど、今度の作品には自信がある。
今まで俺が書いた中での最高傑作だ。
後半はアイディアが浮かばずに苦戦したけど、ギリギリになって浮かんだアイディアは本当に面白いんだ。
(うん、今回はきっと入賞する…!)
そう思うと、急に力がよみがえってくるようだった。
でも、帰ったらとりあえず寝よう。
とにかく、すべてはゆっくり寝てからだ。
そう思い家に向かっている時に、なんだか急にみかんが食べたくなった。
このところは、ろくな食事も摂ってなかったから腹は減ってるはずだけど、それよりもなぜだかみかんが食べたくなったのだ。
(ないだろうなぁ…)
期待はしてなかったけど、やはり家の近くのコンビニにみかんはなかった。
みかんのゼリーやヨーグルトはあったけど、俺が今食べたいのは、加工されていない果物のみかんだ。
(仕方ないな…)
少し足を伸ばして、スーパーまで行ってみることにした。
(なんだって!?)
スーパーは、定休日だった。
(なんてことだ!)
食べられないと思うと、無性に悔しくなって来る。
どこかにないのか、みかんは…
(あ…)
少し離れた所に、小さいスーパーというか、何でも屋みたいな店があることを思い出した。
俺は、半ば意地になり、今度はその店を目指した。
「すまないねぇ…今日はみかんはないんだよ。
昨日ならあったんだけどね。」
「そ、そうなんですか…」
なんてことだ。
30分も歩いて来たのに、無情にもみかんはなかった。
(くそっ!なんでないんだよ!)
イライラしながら、みかんの売っていそうなところを考える…
あるとしたら、隣の駅前にあるスーパーか…
俺は駅に向かい、電車に乗り込んだ。
「嘘だろ…」
スーパーは休みだった。
考えてみれば、うちの近所のスーパーと同じ系列の店だから、定休日も同じなんだ。
もうだめだ…がっくりして俺は家路に着いた。
みかんなんかにこだわらず、まっすぐに家に帰れば良かったのに…
無駄なことをしたという後悔が、疲れて重くなった体をなおさら重くした。
(畜生!みかんの馬鹿野郎!
みかんなんて、もうこれから絶対に食べないぞ!)
お門違いな怒りを募らせ、俺はようやく家に着いた。
さぁ、寝るかと思ったら、玄関のチャイムが鳴った。
「あ、吉田さん。」
「これ、田舎から送って来たから、お裾分け。
良かったら食べて。」
「あ、どうもありがとうございます。」
吉田さんが持って来たのは、良く熟れたみかんだった…
ポストに原稿を落とすと、ほっとして全身の力が抜けるようだった。
投稿小説の締め切りが迫り、ここのところ、連休だったこともあって、徹夜で書き続けていた。
その甲斐あって、ようやく締め切りには間に合ったものの、疲れは半端ない。
だけど、今度の作品には自信がある。
今まで俺が書いた中での最高傑作だ。
後半はアイディアが浮かばずに苦戦したけど、ギリギリになって浮かんだアイディアは本当に面白いんだ。
(うん、今回はきっと入賞する…!)
そう思うと、急に力がよみがえってくるようだった。
でも、帰ったらとりあえず寝よう。
とにかく、すべてはゆっくり寝てからだ。
そう思い家に向かっている時に、なんだか急にみかんが食べたくなった。
このところは、ろくな食事も摂ってなかったから腹は減ってるはずだけど、それよりもなぜだかみかんが食べたくなったのだ。
(ないだろうなぁ…)
期待はしてなかったけど、やはり家の近くのコンビニにみかんはなかった。
みかんのゼリーやヨーグルトはあったけど、俺が今食べたいのは、加工されていない果物のみかんだ。
(仕方ないな…)
少し足を伸ばして、スーパーまで行ってみることにした。
(なんだって!?)
スーパーは、定休日だった。
(なんてことだ!)
食べられないと思うと、無性に悔しくなって来る。
どこかにないのか、みかんは…
(あ…)
少し離れた所に、小さいスーパーというか、何でも屋みたいな店があることを思い出した。
俺は、半ば意地になり、今度はその店を目指した。
「すまないねぇ…今日はみかんはないんだよ。
昨日ならあったんだけどね。」
「そ、そうなんですか…」
なんてことだ。
30分も歩いて来たのに、無情にもみかんはなかった。
(くそっ!なんでないんだよ!)
イライラしながら、みかんの売っていそうなところを考える…
あるとしたら、隣の駅前にあるスーパーか…
俺は駅に向かい、電車に乗り込んだ。
「嘘だろ…」
スーパーは休みだった。
考えてみれば、うちの近所のスーパーと同じ系列の店だから、定休日も同じなんだ。
もうだめだ…がっくりして俺は家路に着いた。
みかんなんかにこだわらず、まっすぐに家に帰れば良かったのに…
無駄なことをしたという後悔が、疲れて重くなった体をなおさら重くした。
(畜生!みかんの馬鹿野郎!
みかんなんて、もうこれから絶対に食べないぞ!)
お門違いな怒りを募らせ、俺はようやく家に着いた。
さぁ、寝るかと思ったら、玄関のチャイムが鳴った。
「あ、吉田さん。」
「これ、田舎から送って来たから、お裾分け。
良かったら食べて。」
「あ、どうもありがとうございます。」
吉田さんが持って来たのは、良く熟れたみかんだった…
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