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果物はいりませんか?

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(あ……)



いつものように仕事帰りにスーパーに寄って家路に着くと、近所の子供たちが家の前で花火をしていた。
 夏は暑くてだるくて大嫌いだけど、花火だけはちょっと好き。
 子供の頃を思い出すっていうのか、やっぱり見た目に綺麗だからかな?
そんなことを考えながら歩いていると…
突然、大きな段ボール箱を抱えた人が私の前に現れた。



 「こんばんは!」

 「え?こ、こんばんは。」



 全く知らない人だけど、思わず返事をしてしまったのは、その人がイケメンだったから!?
イケメンっていうか…今風とはちょっと違ってて昭和のハンサムって感じ?
 背もすらーっと高くて足も長い。
でも、そのハンサムさんが、一体、私に何の用?



 「あの…果物はお好きですか?」

 「え?ま、まぁ好きですけど…」

まさか…ナンパじゃないよね??



 「実は、僕、〇〇の果物屋なんです。
 良かったら買っていただけませんか?
 今日はすごくおいしいマンゴーと、アカシヤの蜂蜜を持ってきてるんですよ。」

そう言って、さわやかな笑顔で段ボール箱を私に向かって傾ける。



 「え……」

なんだ、ナンパじゃなくてセールスか…ちょっとがっかり。
 段ボールの中には、確かにマンゴーと蜂蜜の瓶が入ってた。



 (あ!そういえば……)



そうだ…東野さんが言ってたっけ。
 最近、果物を売る若者がいるって話。
 信仰宗教の信者だとか自己啓発だとかブラックだとか…とにかくあやしいって言ってたよ。
もしかして、これがそれ!?
そう思ったらなんだか急に怖くなって来て…



「ご、ごめんなさい!」



 私はその場から駆け出した。
いくらハンサムなお兄さんでも、そういうのには関われない。
 私は後ろも振り向かず、ただひたすら走り続けた。

 
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