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ゆっくりゆっくり…

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(やっぱり私には無理だ…)



 彼と結婚して半年…
私はついに音をあげてしまった。



 彼は、私より一回り年上で、14歳の女の子が付いて来た。
つまり、私は結婚と同時にその子の母親になったのだ。



おとなしそうな子でうまくいくかと思ったけれど、甘かった。
そもそも、私は彼女にしてみれば大切なお父さんを取ったいやな女でしかないのだろう。
もちろん、お母さんなんて呼ばれたことはないし、ほとんどずっと無視に近い状態だった。



 私はなんとか仲良くなろうと最大限努力したけど、それらはことごとく失敗した。
だから、このごろは作戦を変えた。
 母親の威厳を見せつけようと頑張った。
でも…今日の言葉は堪えた。



 「本当の母親でもないのに、偉そうなことばっかり言わないでよ!」



 彼女の射るような視線に耐え切れず、私は家を飛び出した。



 弱い自分に自己嫌悪しながら、私はいつまでも公園のベンチに座ってた。



 *



 「こんな所にいたのか!」



 暗くなってから、彼が私を探し出した。



 「さ、帰ろう。」

 「私…帰らない…」

 「何、子供みたいなこと言ってんだよ。」

 「私にはもう無理なの。
 翔子ちゃんだって、私がいない方が良いと思うし。」

 彼は、黙って私をみつめ、そして、隣にそっと腰掛けた。



 「すまないと思ってる。
だけど…あいつは今反抗期だから。
 俺も反抗期の頃は母さんにすごく酷い事をした。
なんであんなに荒れてたのか、自分でもわからないんだ…」

 彼がいつになく神妙な声でそう言った。



 確かに、私にも反抗期はあって…その頃は大人のすることが気に食わなかった。
 大人が敵にしか思えなかった。
なんであんなに反抗したのか、私にもわからないし、今は両親ともうまくいってる。



 「……そうだよね。
 反抗期ってそういうもんだよね。」

 「うん、そうなんだ。
だから、あいつのこともそんなに気にしないでくれ。
もちろん、しっかりと叱っておくから。」

 「ううん、叱らないで良いよ。
 翔子ちゃんの言ったことは間違いじゃない。
 私…ちょっと焦り過ぎたような気がする。」

そうだ…考えてみれば、私はまだ母親歴半年の新米だ。
うまくいかないのも当然なんだ…


そう思ったら少しだけ心が軽くなった。



 「帰ろうか…お腹すいちゃった。」



 私がそう言うと、彼はほっとしたような顔で微笑んだ。

 
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