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月夜の散歩

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(気持ち良い……)



 頬を撫でる心地良いそよ風に、私は思わず目を細めた。



 空にはぽっかりと浮かんだ丸い月…
お酒のおかげで、なんだかとっても気分が良くて鼻歌が出てしまう。



 擦れ違う人々が、私に怯えたような目を向ける。
それがまた私はおかしくて、込みあがる笑いを押さえるのが大変だった。



 (満月には犯罪が増えるっていうのは本当ね。)



きっと、そんなにたいしたことじゃなかったはず…
だけど、私には許せないことのように思えた。
 彼のちょっとした言葉や仕草が、許せなく感じてしまった。



もしかしたら、以前からずっと私は我慢していたのかもしれない。
 今日は、満月のおかげでそれが爆発してしまっただけなのかも…
ただ、その爆発の仕方がまずかった。



でも、やってしまったことはもうどうにもならない。
 私は、警察署へ向かってる。
そう…酔っぱらっていても、理性はあるから…
私は罪を償わなければならないってことはわかってる。



 (……どうしよっかなぁ?)



 綺麗な月を見ていたら、警察署へ行くのが嫌になって来た。
このまま、川へ身を投げようか?



 「ちょっと、あなた…」

 音もなく近付いて来た車は、パトカーだった。



そっか、すれ違った誰かが通報したんだな。
 私の服が真っ赤になってたから…



「お巡りさん!お勤め、ごくろうさまです!」

 私は敬礼してふざける。



 私はパトカーに乗せられた。
あぁ、残念…こんな気持ちの良い夜に、外を歩けないなんて…



(さようなら、お月様…
しばらくあなたとも会えなくなりそうね…)

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