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憧れのパリにて

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「だからやなぁ…」



あぁ、なんで伝わらへんねん!? 
そりゃあ、俺は、ボンジュールとウィとノンしか知らんで。
でも、せやからゆうて、フランスに行ったらあかんてゆう法律はあらへんやろ。 
 言葉がしゃべられへんかて、行きたい国に遊びに行くんは自由や。 
そら、がさつな俺にフランスは合わへんかもしれんけど、こう見えて、割りと俺はロマンチストなんや。 
せやから、ベルサイユ宮殿やらセーヌ川が見たかったんや。
シャンゼリゼ通りをグレープ食べながら歩いてみたかったんや。 
それのどこが悪いんや!?



あっちこっち観光して、疲れたさかい、ちょっと休もかなと思て入ったおしゃれなカフェ。 
 俺は、糖分補給にアイスが食べたなったんや。 
せやから、さっきから、「アイスクリーム!」て何度もゆうてんのに、ここの店員は相当ぼんくららしくて、何べんゆうても理解しよらへん。 



 「にいちゃん、よう聞きや。
 俺はアイスが食べたいねん。
あ・い・す・く・り・い・む!」



わかりやすいようにゆっくりゆうても、今度もやっぱりわからへんみたいや。 
ここまで来たら、俺は意地でもアイスを食べんで! 
でも、俺はフランス語がまったくあかん。
どないしたらええんや!? 



 (……せや!)



その時、俺の頭にええ考えが浮かんだ。 



せやせや。 
ローマ字があったやないか。!
 確か、ローマ字は世界に通じるはずや! 



 『aisukuriimugatabetai』



 俺は、カバンの中から鉛筆を取り出し、ローマ字で書いたメモをにいちゃんに見せた。
なのに、にいちゃんは頭をひねるばかりやった。



 「にいちゃん、頼むで。なんでわかれへんねんな!」

ローマ字は万国共通とちごたんか?



 (あ!)



 俺はメモにアイスの絵を描いた。 
ガラスの器に、丸いバニラアイス…その上に生クリームを一絞りしてさくらんぼを乗せて、ウェハースを添えるとゆう昭和感満載のアイスの絵を。 



にいちゃんは、ぐらすとかなんとかゆうて店の奥に引っ込んだ。 
なんやなんや?通じたんか? 



 「おぉっ!それや、それ、それ!」



にいちゃんが持って来たんは、さくらんぼもウェハースも乗ってへんけど、確かにアイスやった。 
そうか、万国共通なんはローマ字やのうて、絵~やったんやな。



 (ああ、おいし…)



ようやく食べられたアイスは、格別美味しいような気がした。
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