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サプライズ

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(あれ~…おかしいなぁ…)



 僕はまわりを見渡した。
 似たようなビルが立ち並ぶオフィス街…
このどこかで、入社式がもうじき始まるはずなんだ。



 (え~っと…〇〇町3丁目14番地…この近くのはずだよなぁ…)


 僕はそれほど方向感覚が良いというわけではないけれど、方向音痴という程でもない。
なのに、なぜこんなにみつからないんだろう?
 刻一刻と時間は進む…
入社式から遅刻なんて洒落にならない。
 僕は、焦りながら会場を探した。



 (……え?)



やっと、その番地がみつかった。
でも、そこは、ビルとビルの間にある陽の当たらない朽ち果てた廃屋だった。



 (いや、さすがにこれはない。)



そう思いながら、窓からそっと中をのぞいてみた。



 (えっ!?)



 僕と同じようにスーツを着た若い男が、部屋の中に落ち着かない様子で座ってた。



 (まさかな…そんなはずないよな…)



もう一度、入社式の書類に目を落とす。
やはり、この番地だ。
 間違いない。



 「あのぉ…」

 「はいはい、新入社員の方ですか?」

 「え?まさか、ここが会場?」

 「はい、イマージュ・ルミエの入社式会場はこちらです。
さ、どうぞ、中へ。」



ギシギシいう廊下を進み、半分腐ったような畳の部屋に足を踏み入れた。
 部屋には、不安そうな顔をしたさっきの若い男がいた。



どうしよう?
こんなボロ家で入社式なんて、どんな会社だよ…
やばいぞ…もしかしたら、とんでもない会社に入ってしまったのかもしれない。



 「それでは入社式を始めます。
わしがここの代表取締役の高木です。」

そう言ったのは、腰の曲がった白髪の老人。
 一体、いくつなんだよ!?と、思わず突っ込みたくなった。



 「では、まずはわしが歌を歌います。」

 爺さんがそう言うと、演歌らしき曲が流れ出した。



えーーーっ!?なんで、カラオケ?
 意味がわからない…しかも、めちゃめちゃへたくそだ。
 僕達は、手拍子を打ちながらじいさんのカラオケ大会が終わるのを待っていたが、じいさんの歌はなかなか終わらない。
 隣の男は五曲目で去って行ってしまった。
 僕もそうすれば良かったんだけど、出る機会を失ってしまった。
 僕は仕方なく、じいさんの歌が終わるのを待っていた。



 「お疲れさん!」



 10曲目が終わった時、高級なスーツを着た男達が数人現れた。



 「驚かせてすまなかったな。」

 「え?」

 「でも、今日はエイプリルフールだからさ。
それにしても、もう一人の方は辛抱が足りないなぁ…」

 「えっと…」

 「じゃあ、本社に行こうか。」

 「は、はぁ…」

まだよくわからないうちに、僕は高級な車に乗っていた。
 着いた先は、高層ビルの28階。
 垢ぬけた雰囲気のオフィスだった。
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