1ページ劇場③

ルカ(聖夜月ルカ)

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デビュー

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「へ、へ、へくしょん!」



 「遠藤さん…くしゃみ止まらないみたいですけど、もしかして花粉症すか?」

 「バ、馬鹿野郎!
 俺がそんな軟弱なものにかかるかよ!
 昭和生まれは丈夫なんだぞ!」

 「それなら良いんすけど…」



そうだ…俺がまだ若い頃なんて、『花粉症』なんて言葉さえ聞いたことがなかった。 
 昭和生まれはそんなものにはかからない。 
いや、そもそもハワイには杉の木がないんだから、花粉症であるはずがない。
きっと、このくしゃみは風邪に違いない。 



それにしても、俺はツイてない。 
せっかくの…しかも、この年にして初めての海外旅行だっていうのに、風邪を引いてしまうとは… 
それに、寒い国ならともかくも、なんでこんな常夏の国で… 



「へ、へくしょん!」



 幸い、くしゃみと鼻水だけで、熱はないから、今日のダイヤモンドヘッドへのハイキングは問題ないけど… 



「おい、三上…ティッシュ持ってないか?」

 「どうぞ。」

 三上はティッシュだけじゃなくて、マスクもくれた。 



ダイヤモンドヘッドからの素晴らしい眺めも、くしゃみと鼻水のせいで、あまり楽しめなかった。
 本当になんてことだ。



 「鼻の穴にティッシュ詰めとくといいっすよ。」

 「あ…そうだな。それ良いかも。」

すすってもすすっても鼻水は垂れて来る。
 三上のアイディアで、それがちょっとだけマシにはなった。



でも、次の日もそんな症状はまったくおさまることなく、どちらかというと悪化したような気さえする。
 親方のすすめで、俺は、日本人医師のいる病院に行く事にした。
 風邪は万病の元とも言うから、あなどってはいけない。


 *



 「花粉症ですね。」

 「えーーーーっ!そ、そんな馬鹿な!
 風邪じゃないんですか?」

 「マンゴーの花粉にやられたのでしょうね。」

 「な、な、なんだって~!」


とてもじゃないけど、信じられなかった。
 昭和40年代生まれの俺が、そんな軟弱なものにかかるなんて…
しかも、マンゴーの花粉だと?
いいかげんなこと、いいやがって!きっとこの医者がヤブなんだ!
 日本に戻ったら、またちゃんと調べてやる!



そんなわけで、俺の初めての海外旅行はさんざんなものとなった。



 *



 「えーーーっ!マジですか!?」



 日本に戻って来た俺は、病院で『花粉症』との診断を受けた。
 俺は素直に、敗北を認めるしかなかった…



 
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