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SAKURA
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「力を入れて…そうそう、その調子!」
シンシアは力を込め、墓石の汚れを取るべくスポンジを動かす。
暦の上では春とはいえ、まだ肌寒いというのに、 シンシアの額にはうっすらと汗が滲んでいた。
それもそのはず、うちの墓は高い山の上にあり、登ってくるだけでも大変だというのに、着いたら着いたで、水を汲みに行ったり墓を磨いたり… そりゃあ、汗もかくってもんだ。
「コレデOK?」
「OK!OK!」
墓を洗い流し、タオルで拭き取る。
そして、持ってきた花を両側に飾って、線香を立てた。
「良いかい?シンシア…
両手をこんな風に合わせて…」
「チョットマッテ!ワタシ、ミンナ二オミヤゲカッテキタ。」
「……お土産?」
「ハイ、サクラcakeね!」
そう言って、シンシアが手提げから取り出したのは、桜餅だった。
「マサトノオカアサン、サクラガダイスキ、イッテタヨネ?」
「え?あぁ、まぁな。」
(母さんが好きだったのは、桜餅じゃなくて桜の花なんだけどな…)
桜餅を供えて、シンシアと二人で手を合わせた。
(ご先祖様、母さん…今日は僕の婚約者のシンシアを連れて来ました。
6月には結婚するつもりです。どうぞよろしくお願いします。)
祈りを済ませて顔を上げると、シンシアはまだ何事かを祈っていた。
シンシアの横顔をみつめてると、その目がぱっと開いた。
「マサト…オカアサンモゴセンゾモ、ガンバレッテイッテクレタ!」
嬉しそうにそう言った。
「そ、そうなんだ…」
シンシアはちょっと変わった子だけど、素直で純粋な子だから、本当に母さんやご先祖様の声が聞こえたのかもしれない。
*
「サクラcake、オイシイネ!」
持ち帰った桜餅を食べ、シンシアは笑みを浮かべた。
もう少ししたら、桜の花が咲く。
母さんが好きだった桜を、シンシアに見せてやろう…
シンシアは力を込め、墓石の汚れを取るべくスポンジを動かす。
暦の上では春とはいえ、まだ肌寒いというのに、 シンシアの額にはうっすらと汗が滲んでいた。
それもそのはず、うちの墓は高い山の上にあり、登ってくるだけでも大変だというのに、着いたら着いたで、水を汲みに行ったり墓を磨いたり… そりゃあ、汗もかくってもんだ。
「コレデOK?」
「OK!OK!」
墓を洗い流し、タオルで拭き取る。
そして、持ってきた花を両側に飾って、線香を立てた。
「良いかい?シンシア…
両手をこんな風に合わせて…」
「チョットマッテ!ワタシ、ミンナ二オミヤゲカッテキタ。」
「……お土産?」
「ハイ、サクラcakeね!」
そう言って、シンシアが手提げから取り出したのは、桜餅だった。
「マサトノオカアサン、サクラガダイスキ、イッテタヨネ?」
「え?あぁ、まぁな。」
(母さんが好きだったのは、桜餅じゃなくて桜の花なんだけどな…)
桜餅を供えて、シンシアと二人で手を合わせた。
(ご先祖様、母さん…今日は僕の婚約者のシンシアを連れて来ました。
6月には結婚するつもりです。どうぞよろしくお願いします。)
祈りを済ませて顔を上げると、シンシアはまだ何事かを祈っていた。
シンシアの横顔をみつめてると、その目がぱっと開いた。
「マサト…オカアサンモゴセンゾモ、ガンバレッテイッテクレタ!」
嬉しそうにそう言った。
「そ、そうなんだ…」
シンシアはちょっと変わった子だけど、素直で純粋な子だから、本当に母さんやご先祖様の声が聞こえたのかもしれない。
*
「サクラcake、オイシイネ!」
持ち帰った桜餅を食べ、シンシアは笑みを浮かべた。
もう少ししたら、桜の花が咲く。
母さんが好きだった桜を、シンシアに見せてやろう…
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