1ページ劇場③

ルカ(聖夜月ルカ)

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お父さんの雪うさぎ

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(まだ降ってる…)



今年の冬はすっごく寒い。
いつもは雪なんて滅多に降らないのに、今年はたくさん降って…これでもう五日も降り続いてる。
おかげで庭は全部真っ白だ。



 「明日は雪かきしなきゃいけないな。」

 「スコップ買っといて正解だったわね。」

お父さんとお母さんは、外を見ながらそんな話をしていた。



 *



 「ヒカル!早く、出て来いよ~!」

 次の朝、僕はお父さんの大きな声で起こされた。
 時計を見たら、まだ7時だった。
 学校が休みの日は、こんなに早く起きなくて良いのに。


 (さむっ…)



 僕はパジャマの上にダウンをひっかけて外に出た。



 「うわっ!」



 庭にはでっかい雪うさぎがいた。



 「お父さん…どうしたの?これ。」

 「雪かきするだけじゃもったいないって思って作ったんだ。
どうだ?すごいだろう?」

お父さんは、雪うさぎを自慢した。
でも、確かにすごい。



 「まぁ!なによ、これ!」

 出て来たお母さんが、雪うさぎを見て大きな声を出した。



 「すごいだろ!」

 「すごいじゃないでしょ!これ、にんじんじゃないの!?」

 「え…あはは。赤い物って言ったら、にんじんしか思いつかなくて…」

 本当だ…うさぎの目には、にんじんが三本ずつ使われていた。
お母さんは、さすがに主婦だね、そんなところに気が付くなんて。



 「食べ物をそんなものに使って…」

お母さんは、にんじんのことをけっこう怒ってる。



 「ま、そんなに怒らないでよ。
そんなことより、二人とも…こっちに来てよ。」

お父さんが手招きするから、門の方へまわってみると…



「うわぁ…」



 雪うさぎは、中が空洞になっていた。
しかも、真ん中にはなんだかよくわからないものが置いてあって、その上には網が載せてあった。



 「さ、入って!」

 「あなた…一体、何時からこんなもの作ってたの?
しかもこんな火鉢、一体どこから持って来たのよ。
それに座布団が濡れちゃうじゃないの!」

お母さんは怒りながらも、僕と一緒にうさぎの中に入った。



 「さ、とにかく二人とも座って。」

お父さんは、火鉢ってものの上にお餅を置いた。
雪の中なのに、なんとなく暖かいような感じがする。



しばらくすると、網の上のお餅はぷくーっと膨れて…



「おいしいだろ?」

 「うん。」



お母さんもいつの間にか笑顔になっていた。

 
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