上 下
5 / 401
お父さんの雪うさぎ

しおりを挟む
(まだ降ってる…)



今年の冬はすっごく寒い。
いつもは雪なんて滅多に降らないのに、今年はたくさん降って…これでもう五日も降り続いてる。
おかげで庭は全部真っ白だ。



 「明日は雪かきしなきゃいけないな。」

 「スコップ買っといて正解だったわね。」

お父さんとお母さんは、外を見ながらそんな話をしていた。



 *



 「ヒカル!早く、出て来いよ~!」

 次の朝、僕はお父さんの大きな声で起こされた。
 時計を見たら、まだ7時だった。
 学校が休みの日は、こんなに早く起きなくて良いのに。


 (さむっ…)



 僕はパジャマの上にダウンをひっかけて外に出た。



 「うわっ!」



 庭にはでっかい雪うさぎがいた。



 「お父さん…どうしたの?これ。」

 「雪かきするだけじゃもったいないって思って作ったんだ。
どうだ?すごいだろう?」

お父さんは、雪うさぎを自慢した。
でも、確かにすごい。



 「まぁ!なによ、これ!」

 出て来たお母さんが、雪うさぎを見て大きな声を出した。



 「すごいだろ!」

 「すごいじゃないでしょ!これ、にんじんじゃないの!?」

 「え…あはは。赤い物って言ったら、にんじんしか思いつかなくて…」

 本当だ…うさぎの目には、にんじんが三本ずつ使われていた。
お母さんは、さすがに主婦だね、そんなところに気が付くなんて。



 「食べ物をそんなものに使って…」

お母さんは、にんじんのことをけっこう怒ってる。



 「ま、そんなに怒らないでよ。
そんなことより、二人とも…こっちに来てよ。」

お父さんが手招きするから、門の方へまわってみると…



「うわぁ…」



 雪うさぎは、中が空洞になっていた。
しかも、真ん中にはなんだかよくわからないものが置いてあって、その上には網が載せてあった。



 「さ、入って!」

 「あなた…一体、何時からこんなもの作ってたの?
しかもこんな火鉢、一体どこから持って来たのよ。
それに座布団が濡れちゃうじゃないの!」

お母さんは怒りながらも、僕と一緒にうさぎの中に入った。



 「さ、とにかく二人とも座って。」

お父さんは、火鉢ってものの上にお餅を置いた。
雪の中なのに、なんとなく暖かいような感じがする。



しばらくすると、網の上のお餅はぷくーっと膨れて…



「おいしいだろ?」

 「うん。」



お母さんもいつの間にか笑顔になっていた。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

覚醒呪伝-カクセイジュデン-

星来香文子
キャラ文芸
あの夏の日、空から落ちてきたのは人間の顔だった———— 見えてはいけないソレは、人間の姿を装った、怪異。ものの怪。妖怪。 祖母の死により、その右目にかけられた呪いが覚醒した時、少年は“呪受者”と呼ばれ、妖怪たちから追われる事となる。 呪いを解くには、千年前、先祖に呪いをかけた“呪掛者”を完全に滅するしか、方法はないらしい————

男女の友人関係は成立する?……無理です。

しゃーりん
恋愛
ローゼマリーには懇意にしている男女の友人がいる。 ローゼマリーと婚約者ロベルト、親友マチルダと婚約者グレッグ。 ある令嬢から、ロベルトとマチルダが二人で一緒にいたと言われても『友人だから』と気に留めなかった。 それでも気にした方がいいと言われたローゼマリーは、母に男女でも友人関係にはなれるよね?と聞いてみたが、母の答えは否定的だった。同性と同じような関係は無理だ、と。 その上、マチルダが親友に相応しくないと母に言われたローゼマリーは腹が立ったが、兄からその理由を説明された。そして父からも20年以上前にあった母の婚約者と友人の裏切りの話を聞くことになるというお話です。

ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜

望月かれん
ファンタジー
 中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。 戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。 暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。  疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。 なんと、ぬいぐるみが喋っていた。 しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。     天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。  ※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。

婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ

曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。 婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。 美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。 そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……? ――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

ダンマス(異端者)

AN@RCHY
ファンタジー
 幼女女神に召喚で呼び出されたシュウ。  元の世界に戻れないことを知って自由気ままに過ごすことを決めた。  人の作ったレールなんかのってやらねえぞ!  地球での痕跡をすべて消されて、幼女女神に召喚された風間修。そこで突然、ダンジョンマスターになって他のダンジョンマスターたちと競えと言われた。  戻りたくても戻る事の出来ない現実を受け入れ、異世界へ旅立つ。  始めこそ異世界だとワクワクしていたが、すぐに碇石からズレおかしなことを始めた。  小説になろうで『AN@CHY』名義で投稿している、同タイトルをアルファポリスにも投稿させていただきます。  向こうの小説を多少修正して投稿しています。  修正をかけながらなので更新ペースは不明です。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

処理中です...