愛しのカレはV（ヴィジュアル）系

『瓢箪から駒』ってやつでしょうか？

２５

「さゆみ…大変だよ…」

 「どうかしたの？」

 「どうかって…私のこと、見て！
 何か気付かない？」

 「え…？」

さゆみは私のことをまじまじと見つめる…



「あーーーーっ！」

 「……気付いた？」

 「ど、どうしよう！？」



その時、電車は静かに次の駅に着いた。



 「ヅラちゃん！……さゆみちゃん？」

 「キ、キースさん…」

 「だめだ…もう逃げられない…」

 「いや～、同じ電車とは奇遇やなぁ…
あれ？…二人ともどないかしたん？」



キースさんが変に思ってる。
そりゃあ、そうだよね。
 二人とも、深く俯いて黙ってるんだもん。



でも…私達…忘れてたんだよ。
 今日は、まさか二人と会うなんて思ってなかったから、いつも通りの私達なんだよ。
お化粧もほとんどしてないし、服だって…
あぁ、こんな格好でキースさんやリクさんに会わなきゃならないなんて…
あ、私は、以前もキースさんに見られてるけど…さゆみが可哀想だよね。
リクさんに会えるのは嬉しいけど、今日はおしゃれの欠片もないんだもん。
……でも、ここまで来たらもうどうにもならない。
うん、もう諦めるしかないね。



 私はへらへらと笑って、顔を上げた。



 「すみません。急なことだったんで、今日はなんだかボロボロですが…」

 「ボロボロて…どこがボロボロやねんな。
いつも通り、可愛いで。」

う～…キースさん、無理してるよ、かなり。
そのうち、さゆみも諦めたのか顔を上げて…他愛ない会話を交わしながら、私達は〇〇駅を目指した。