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ジョン
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「え?…でも…」
スージーからはアンドリューは何年もかかって壷の代金を弁償したと聞いていたため、アンドリューの今の言葉に困惑する。
「……俺はその申し出を断った。」
「なぜだ?払ってもらえばおまえも楽になれたんじゃないのか?」
ラルフが至極当然と思われる質問を投げかけた。
アンドリューはその質問に、急に眉をひそめ、ラルフを睨み付けた。
「そんなことをしたら……まるで、俺がエイミーを売ったみたいじゃないか!
俺はやりたくてやったんじゃないんだぞ!
金のためにエイミーを養子に出したんじゃないんだ!
いくら苦しくたって、そんなこと、してもらえるわけないだろ!」
アンドリューは興奮して身を震わせ、先程よりさらに険しくなった顔をラルフの方に向けたが、それに対してラルフは気の抜けるような笑みを返した。
「おまえ、けっこう良い奴だな…」
「えっ!?」
考えてもみなかったことを言われ、アンドリューは不意に顔を赤らめる。
「……おまえの気持ちはよくわかった。
それじゃあ、最後の質問だ。
おまえは、スージーのことが嫌いなのか?」
「えっ!?……き……嫌いじゃないよ。」
アンドリューは、俯き、消え入りそうな声で答えた。
「じゃあ、なぜ、スージーに冷たくするんだ?」
「それは……ここに来てほしくないからだ。」
「嫌いじゃないのに、来られるのがいやなのか?
おかしいじゃないか。」
「あいつは、ここへ来る度に食料品やいろんなものを買って来てくれる。
それも遠い町から何時間も歩いてだぞ!
……それが申し訳ないんだ。
……それに……」
アンドリューはそこまで言うと、唇を噛み締め口をつぐんだ。
「それに…まだ何かあるのか?」
「……あいつも、いい年だ。
俺のことなんか忘れて、早く結婚した方が幸せになれる。
だから、もうここへは来てほしくないんだ!」
アンドリューは胸にたまった感情を吐き出すように、声を荒げた。
「なるほど…
おまえ、スージーのことが好きなんだな。」
「な、な、な………!!」
ラルフの一言に、アンドリューの顔はこれ以上ない程に真っ赤に変わり、リオはその様子に不謹慎だと思いながらもこみあげる笑いを懸命にこらえる。
「あ~あ、そんな真っ赤になって…
おまえ、子供並みに純情だな。」
「お、お、おまえ……」
アンドリューは、生意気なラルフに言い返したい気持ちばかりが焦り、ただ、口をぱくぱくと魚のように動かし続け、リオはその光景にたまらなくおかしくなり、肩を震わせ必死に堪えた。
スージーからはアンドリューは何年もかかって壷の代金を弁償したと聞いていたため、アンドリューの今の言葉に困惑する。
「……俺はその申し出を断った。」
「なぜだ?払ってもらえばおまえも楽になれたんじゃないのか?」
ラルフが至極当然と思われる質問を投げかけた。
アンドリューはその質問に、急に眉をひそめ、ラルフを睨み付けた。
「そんなことをしたら……まるで、俺がエイミーを売ったみたいじゃないか!
俺はやりたくてやったんじゃないんだぞ!
金のためにエイミーを養子に出したんじゃないんだ!
いくら苦しくたって、そんなこと、してもらえるわけないだろ!」
アンドリューは興奮して身を震わせ、先程よりさらに険しくなった顔をラルフの方に向けたが、それに対してラルフは気の抜けるような笑みを返した。
「おまえ、けっこう良い奴だな…」
「えっ!?」
考えてもみなかったことを言われ、アンドリューは不意に顔を赤らめる。
「……おまえの気持ちはよくわかった。
それじゃあ、最後の質問だ。
おまえは、スージーのことが嫌いなのか?」
「えっ!?……き……嫌いじゃないよ。」
アンドリューは、俯き、消え入りそうな声で答えた。
「じゃあ、なぜ、スージーに冷たくするんだ?」
「それは……ここに来てほしくないからだ。」
「嫌いじゃないのに、来られるのがいやなのか?
おかしいじゃないか。」
「あいつは、ここへ来る度に食料品やいろんなものを買って来てくれる。
それも遠い町から何時間も歩いてだぞ!
……それが申し訳ないんだ。
……それに……」
アンドリューはそこまで言うと、唇を噛み締め口をつぐんだ。
「それに…まだ何かあるのか?」
「……あいつも、いい年だ。
俺のことなんか忘れて、早く結婚した方が幸せになれる。
だから、もうここへは来てほしくないんだ!」
アンドリューは胸にたまった感情を吐き出すように、声を荒げた。
「なるほど…
おまえ、スージーのことが好きなんだな。」
「な、な、な………!!」
ラルフの一言に、アンドリューの顔はこれ以上ない程に真っ赤に変わり、リオはその様子に不謹慎だと思いながらもこみあげる笑いを懸命にこらえる。
「あ~あ、そんな真っ赤になって…
おまえ、子供並みに純情だな。」
「お、お、おまえ……」
アンドリューは、生意気なラルフに言い返したい気持ちばかりが焦り、ただ、口をぱくぱくと魚のように動かし続け、リオはその光景にたまらなくおかしくなり、肩を震わせ必死に堪えた。
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