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ジョン

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「では……」

それだけ言うと、リオはもったいぶって次の言葉をじらせる。
アンドリューは騒がないようにとの配慮からなのか、毛布に顔を埋めて必死で声を押し殺していた。



「………質問させてもらおうか。」

アンドリューにはその言葉がよほど意外だったのか、不意に毛布から顔を上げた。



「……知らないのか?
俺は、嘘吐きを連れて行く前に最後にいつも質問をすることを。
……では、尋ねる。
おまえは、今までに嘘を吐いたことがあるか?」

アンドリューは、唇を噛み締め、毛布を両手で握り締め、じっと何かを考えるように一点をみつめる。



「……どうなんだ?
あるのかないのか?」

「……あ……あ……あります。」

アンドリューは、リオに急かされ、上ずった声でそう答えた。



「そうかあるのか。
では、それが本当なのかどうなのか、今からいくつか質問させてもらう。
まず…おまえが最初に吐いた嘘はどんな嘘だ?」

リオの思わぬ質問に、アンドリューは一瞬驚いたような表情を浮かべたが、やがて、目を瞑り、額に手をやって俯いた。
アンドリューが、過去の記憶を懸命に辿っていることはリオやラルフにもすぐにわかった。
その間に、リオはラルフに向かって小さな目配せを送り、ラルフはそれにいつもの微笑を返した。



「……あ、あの…
ど、どれが最初なのか…お、俺……」

アンドリューは困惑した顔をリオに向ける。



「おまえが覚えてる中で一番古いものならなんでも良い。」

「そ、それなら……」

「早く話せ。」

「……ス…スージーに嘘を吐きました。
俺の母親は、遠い国のお姫様で…俺達はとても幸せに暮らしてた所を親父に突然誘拐されてここに連れて来られたと……」

アンドリューは始終俯いたままでそう話した。



「なぜ、そんな嘘を吐いたんだ?」

「……俺は……スージーに嫌われたくなかった。
親父が事件を犯したせいで、俺達はずっと町のみんなからいじめられてたから…
友達なんて当然一人もいなかった。
俺はいつもエイミーだけしか遊ぶ相手がいなかった。
スージーは、そんな中でやっと出来た友達で……俺やエイミーにもとても優しくしてくれた。
俺達をいじめない子供に会ったのは初めてで……
だから……嫌われたくなくて…犯罪者の子供だって思われたくなくて、それで、そんな嘘を……」

アンドリューは、込み上げる感情に溢れる涙を何度も拭った。
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