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ジョン

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次の日の明け方、扉の開く音でラルフは目を覚ました。
この時間、リオの姿はアンドリューにはウォルフボーラスに見えるはずなのに、なぜそんなことをするのかとラルフが考えているうちに、当のアンドリューが目を覚ました。



「リオ、もど……」

アンドリューの傍に立ち尽くすリオを見て、アンドリューは狂気の叫びを発した。



(リオの奴…こうなることはわかってる筈なのに、どうしてこんなことを…)

ラルフは、リオの行動が理解出来ず、目の前の状況をじっと見守る。



アンドリューは、ベッドの上で真っ青な顔をひきつらせ、わけのわからないことを叫んでいた。
あまりに驚きと恐怖が大きすぎるのか、アンドリューは涙を流し、動くことも出来ないようだった。



「騒ぐな…」

リオはウォルフボーラスのふりをしているためか、いつもよりうんと低く重々しい声に、さらにすごみを加えて一言発する。
それでも、アンドリューの錯乱状態は少しもおさまらなかった。
むしろ、余計に酷くなったようにも感じられた。



「……それ以上騒ぐなら、俺はここを出て行く。
俺はうるさい奴は嫌いなんだ。
そうだな、うるさいおまえの代わりにおまえの大切な者をさらいに行く事にするが、それでも良いのか…」

その言葉にアンドリューは一瞬叫ぶのをやめたが、今度は頭から毛布をかぶり、またすぐに先程と同じように泣き声とも叫び声ともわからない声を上げ始めた。
その様子はまさに狂人そのもので、恐怖のあまりアンドリューが本当に頭がおかしくなったのではないかと、ラルフは彼の身を案じた。



「そうか、やめないんだな。
じゃあ、俺はエイミーの所へ行くとしよう。」

アンドリューの叫び声に負けないようにリオは大きく声を張り上げた。
その瞬間、アンドリューの叫びがやみ、毛布の間から涙でぐしゃぐしゃになった顔をのぞかせた。
アンドリューは両手で口許を押さえ、必死になって首を振り続けた。



「……それは、エイミーに手出しはしないでくれと言う事か?」

アンドリューはそのままの格好で、今度は何度も頷いた。



「騒がないのなら、それで良い。
……おまえは、俺がなぜここに来たかわかっているようだな…」

その言葉に、アンドリューの瞳にはまた熱い涙が溢れ、その頬を伝って流れ落ちた。

 
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