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エミリア

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「エミリア、鏡はない?」

「鏡……?
えっと、鏡……鏡はどこかにあったはずだけど…」

エミリアはまだ興奮しており、鏡の場所が思い出せないのか、どこか苛立った声で呟く。



「あ……そうだわ!」

「どうしたの?」

「……リオ…その袋を取って。」

「えっ!?でも、これを取ると……」

「良いから!」

その声と同時に、リオの頭から布袋が取り去られた。
リオの目の前には、とても驚いた顔をそたエミリアが立ち尽くし、リオの顔を穴の開くほど見つめていた。



「……エミリア…大丈夫なの?」

「……リオ……」

エミリアは、懸命に涙をこらえ唇が白くなるほど噛み締める。



「エミリア…どうしたの?」

「ありがとう!リオ!!
本当にありがとう!!」

そう言って、突然抱き着いてきたエミリアにリオは目を丸くしながら受け止めた。



「どうしたんだよ、エミリア…」

「おまえは本当に鈍いなぁ…
エミリアにはおまえが彼女自身に見えてるんだ。
……エミリア、そうだろ?」

「そうよ…
でも、今までの私じゃない!
母さんとそっくりなぱっちりした瞳の私よ。
……あぁ、なんて素敵…!
もう私は醜い女の子じゃないんだわ!」

そう言うエミリアの声はとても晴れ晴れとしたもので、表情もつい先程とは別人のように輝いていた。



「エミリア、顔を洗って来たらどうだ?
瞼の腫れがひいたら、君はもっと美人になるぞ!」

「そうね!
ありがとう、ラルフ!」

ラルフに向けられた笑顔は、今までエミリアが見せたことのないような笑顔だった。
エミリアはラルフの頭をくしゃくしゃと乱暴に撫ぜると、洗面所に向かって駆け出した。



「……そうか…エミリアが一番怖いものは自分自身だったのか…」

「最初におまえを見た時、彼女が『どうして私がここに』って言ったのを聞いてなかったのか?」

「あの時は僕もまだ寝惚けてたし…それに焦ってたし…」

ラルフは呆れたように首を振る。
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