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「どうした、トレル…」

「……いや…なんでも…」

上体を起こし、煙草をくゆらせるトレルに、エルスールがそっと身体を寄せる…



「……相変わらず、遊んでるようだな…」

小さな声で呟くエルスールに、トレルがくすりと笑う。



「焼き餅か?……おまえらしくないな。
そんなことは気にしなかったんじゃなかったのか?」

「……最近は、少し度を越しているのではないか。
私と会うのは、二週間ぶりだぞ…」

「何も毎日他の女にあってるわけじゃないさ。
イアン牧師は、けっこう人遣いが荒い男でな…」

「トレル!」

エルスールが、トレルの身体に覆い被さり、その唇を自分の唇で塞いだ。



「…危ないじゃないか、火傷する所だったぞ。」

トレルは、何事もなかったかのように短くなった煙草を灰皿に押しつけた。



「冷たい男だな…」

「おまえが情熱的過ぎるんだよ。」

「トレル…この町を出ないか?
二人でどこか遠くへ行ってみないか?」

「また、その話か…」

うんざりした声でトレルは呟き、再びベッドの中に潜りこんだ。




「そんなこと出来ないってことはわかってるだろ?」

「なぜだ?
イアンにかけられた術の解除など、造作もない。
足止めの術をはずせば、どこへでも行けるではないか…」

「おまえにはまだよくわかっていないようだな…」

独り言のようにトレルが囁く…




「私に飽きたのか?
それとも、本気で好きな女が出来たのか?」

「……そうじゃないさ。
俺がここから離れられないのは…そんなこととは関係ない…」

エルスールは、納得のいかない眼差しでトレルをみつめる。



「悔しい…
私ばかりが、なぜ、おまえにそんなに惹かれてしまうのか…」

トレルに覆い被さったエルスールが、トレルの全身に熱い口付けの雨を降らせる…
降り止まない情熱の赤い雨を…



「おい、おい…エルスール…」

ふりほどこうとしても決して離れないエルスールの火のような情熱に、次第にトレルも溶けて行く…

 
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