上 下
236 / 291
scene 12

15

しおりを挟む
「あぁぁぁぁぁぁぁーっっ!!」

貯蔵庫にエルスールの叫びが響く。

そして直後、ごふっという鈍い音とともに、彼女は口から大量の血を吐いた。

「お前も悪魔のくせに、なぜ人間に味方する?悪魔は悪魔同士、手を結ばないとダメじゃないか」

形のいい額にサラサラと漆黒の髪がこぼれる。

優しい目で、優しい声音で、エルスールに突き立てた手を抉るように動かすと、一気に体から引き抜いた。

「う…ぅ…」

エルスールの苦しげに折り曲げた体から、じわじわと赤い血だまりが広がっていく。

ルシファーは指についた血液を綺麗に舐めとると、彼女の胸倉を掴んで立ち上がらせた。

「仲間になるか?こんな人間なんて捨て置いて、オレの側に居ると誓うのならばその命、もう一度だけ助けてやろう」

「断、る…」

エルスールは肩で大きく息をつきながら、切れ切れにだが答える。

「私の命は…トレ、ルのもの、だ」

「そうか、それは残念だ」

ルシファーは掴んでいたその手を突如離した。

ドサリとエルスールの体が床に崩れる。

もうグッタリとして動かなかった。

その姿を見て笑みを浮かべたルシファーは、次にトレルへ挑発的な視線を向けた。

「無力を嘆くがいい…人間は所詮、悪魔には敵わないんだよ。弱い分際でオレに刃向かうから、こんなことになる。愛しいものが目の前で死んでいく様を見るのは、どんな気分だい?悲しい…それとも憎いか…」

美しいまでの笑顔を向けて、ルシファーは彼に問いかける。

「…い」

トレルは必至に声を絞りだす。

「…いよ…」

「ん…何だって?聞こえないな」

「…憎いって言ってんだよっ!!」

ギッと彼は眼の前の悪魔を睨みつけた。

「ふぅん、あれだけ痺れてたのに、もう話せるんだ…」

ルシファーは面白いおもちゃを見つけたといわんばかりの、嬉しそうな顔をした。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】左目をやる契約をしたら、極上の美形悪魔に言い寄られています

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
 悪魔祓いとして教会に所属する司教セイルは、依頼で田舎の教会を訪れる。教会を管理する司祭を誑かす悪魔の対峙が目的だったが、現れたアモルは「懺悔をしたい」と申し出た。変わり者の高位悪魔と話すうちに、この教会で起きている怪異の原因は目の前のアモルではないと知り……。  大きな力を必要とするセイルは、高位悪魔アモルと契約した。その裏に隠された彼の思惑に気づかぬまま、失われた過去を思い出すよう迫るアモルにセイルは惹かれていく。  悪魔の誘惑にエクソシストは堕ちてしまうのか――。 【注意】この小説はすでに完結済みの作品を投稿するものです。そのため完結確実のタグをつけました。  キスシーン等ありますが、BLになりますのでご注意ください。 【同時掲載】アルファポリス、エグリスタ、小説家になろう

無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!

飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。 貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。 だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。 なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。 その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

公爵家に生まれて初日に跡継ぎ失格の烙印を押されましたが今日も元気に生きてます!

小択出新都
ファンタジー
 異世界に転生して公爵家の娘に生まれてきたエトワだが、魔力をほとんどもたずに生まれてきたため、生後0ヶ月で跡継ぎ失格の烙印を押されてしまう。  跡継ぎ失格といっても、すぐに家を追い出されたりはしないし、学校にも通わせてもらえるし、15歳までに家を出ればいいから、まあ恵まれてるよね、とのんきに暮らしていたエトワ。  だけど跡継ぎ問題を解決するために、分家から同い年の少年少女たちからその候補が選ばれることになり。  彼らには試練として、エトワ(ともたされた家宝、むしろこっちがメイン)が15歳になるまでの護衛役が命ぜられることになった。  仮の主人というか、実質、案山子みたいなものとして、彼らに護衛されることになったエトワだが、一癖ある男の子たちから、素直な女の子までいろんな子がいて、困惑しつつも彼らの成長を見守ることにするのだった。

与えてもらった名前を名乗ることで未来が大きく変わるとしても、私は自分で名前も運命も選びたい

珠宮さくら
ファンタジー
森の中の草むらで、10歳くらいの女の子が1人で眠っていた。彼女は自分の名前がわからず、それまでの記憶もあやふやな状態だった。 そんな彼女が最初に出会ったのは、森の中で枝が折られてしまった若い木とそして時折、人間のように見えるツキノワグマのクリティアスだった。 そこから、彼女は森の中の色んな動物や木々と仲良くなっていくのだが、その森の主と呼ばれている木から、新しい名前であるアルテア・イフィジェニーという名前を与えられることになる。 彼女は様々な種族との出会いを経て、自分が何者なのかを思い出すことになり、自分が名乗る名前で揺れ動くことになるとは思いもしなかった。

テイマー勇者~強制ハーレム世界で、俺はとことん抵抗します~

つづれ しういち
ファンタジー
 ある日異世界に落とされた日向継道(ひゅうが・つぐみち)は、合気道を習う高校生。目を覚ますと、目の前にはいやにご都合主義の世界が広がっていた。 「あなたは、勇者さまですわ」「私たちはあなたの奴隷」「どうか魔王を倒してください」  しかも期限は一年だという。  チートやハーレムの意味ぐらいは知っているが、それにしてもここははひどすぎる。とにかく色んな女たちが、無闇やたらに寄ってくるんだ。その上なぜか、俺には人を問答無用で自分の奴隷にする能力「テイム」があるのだという。そんなことがあっていいのか。断固、拒否させていただく!  一刻も早く魔王を倒して、リアルの世界へ戻らねば……! ※つづれしういちによる「アルファポリス」での連載です。無断転載はお断りします。 ※チートとハーレム好きな方にはお勧めしません。ブラウザバックをお願いします。 ※冒頭、いじめのシーンがあります。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時連載しています。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

処理中です...