203 / 291
scene 11
4
しおりを挟む
*
風が強く吹いた。
どれくらいの距離を来たかなど、彼女にはわからない。
ただ、一刻も早くトレルに報告すること。
それだけを考えて、エルスールは走った。
彼らのニオイがだんだんと近づいてくる。
木々の間をすり抜け、草の茂みをかき分けて…黒狼から人の姿に戻ると、段差から下の道へと飛び降りた。
「トレルっ!!」
「わっ」
いきなり上から降ってきた人影に、トレルは驚きの声を上げた。
「エ、エルスール…脅かすなよ」
「悪い…急ぎの用件があったからつい…」
息も途切れ途切れ、そう答える。
「急ぎの用事?」
「トレルに会いたかったからじゃないのか?」
アズラエルがからかうような口調で、横から口をはさんだ。
「それも本心だが、今はそれどころじゃないんだ」
「まさか、ケイトに何かあったのか!?」
ランディの顔色が青ざめる。
「…そういえば、お前、すっかり元気になったみたいだな」
エルスールは用件を伝えることで頭がいっぱいだったのか、今初めて彼の存在に気づいた顔をした。
「そ、そんなことよりどうしたんだ?」
「そうだ。ルシファーのことなんだ」
「ルシファー?」
アズラエルが訝しげな表情で首をかしげる。
「驚かないで聞いてくれ…実は、昨日突然倒れて一晩眠ったら、六歳くらいに体が成長してしまったんだ」
「成長、した…それで、他に変わったことは?」
「いや、今のところ他は依然のまま何も変わらないみたいだ」
「…………」
それを聞いてアズラエルが難しい顔をして黙り込む。
「どうした?」
「いや、急激に成長するはずはないんだが…気になるな。とにかく急いで戻ろう」
風が強く吹いた。
どれくらいの距離を来たかなど、彼女にはわからない。
ただ、一刻も早くトレルに報告すること。
それだけを考えて、エルスールは走った。
彼らのニオイがだんだんと近づいてくる。
木々の間をすり抜け、草の茂みをかき分けて…黒狼から人の姿に戻ると、段差から下の道へと飛び降りた。
「トレルっ!!」
「わっ」
いきなり上から降ってきた人影に、トレルは驚きの声を上げた。
「エ、エルスール…脅かすなよ」
「悪い…急ぎの用件があったからつい…」
息も途切れ途切れ、そう答える。
「急ぎの用事?」
「トレルに会いたかったからじゃないのか?」
アズラエルがからかうような口調で、横から口をはさんだ。
「それも本心だが、今はそれどころじゃないんだ」
「まさか、ケイトに何かあったのか!?」
ランディの顔色が青ざめる。
「…そういえば、お前、すっかり元気になったみたいだな」
エルスールは用件を伝えることで頭がいっぱいだったのか、今初めて彼の存在に気づいた顔をした。
「そ、そんなことよりどうしたんだ?」
「そうだ。ルシファーのことなんだ」
「ルシファー?」
アズラエルが訝しげな表情で首をかしげる。
「驚かないで聞いてくれ…実は、昨日突然倒れて一晩眠ったら、六歳くらいに体が成長してしまったんだ」
「成長、した…それで、他に変わったことは?」
「いや、今のところ他は依然のまま何も変わらないみたいだ」
「…………」
それを聞いてアズラエルが難しい顔をして黙り込む。
「どうした?」
「いや、急激に成長するはずはないんだが…気になるな。とにかく急いで戻ろう」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる