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scene 10

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 (………!!)



(………夢か……)



トレルが目を覚ましたのは、粗末なベッドの上だった。



(……しかし、ここは…)



目の見えない自分が薪割り等出来るはずはなく、そんな自分を雇ってくれる者もいるはずはない…



あの日…アズラエルと別れてからしばらく歩いた頃、インギーの耳にかすかに人の話し声が聞こえて来た。
インギーは、あわててランディ達の住む村の名前を書き、その者たちに手渡した。



「なんだ、おまえ、サーリックの村に行きたいのか?」

インギーは何度も頷いた。

「サーリックまでは遠いぞ…その足じゃ相当かかるだろう。
馬車でもつかまえないとなぁ…
……ところで、おまえ、金は持ってるのか?」



インギーが袋の中から銀貨を差し出した途端、男達はその金をひったくった上にインギーを激しく殴りつけ走り去ってしまったのだ。

やっとのことで立ち上がり、インギーはよろよろとおぼつかない足取りで歩き出した。
自分が今どこを歩いているのかもわからない。
金も失ってしまった…
アズラエルにもらった杖を頼りに、足をひきずりながらどうにか町に辿りついた。

しかし、金も持たない身体の不自由なインギーに世間の風は冷たかった。

話を聞いてくれる者さえいない。
空腹を感じても、インギーにはそれをどうすることも出来ない。
せめて水が飲みたいと思い、インギーは地面に「水」と書いた。
しばらくすると、いきなり冷たい水を浴びせられ、数人の若者が笑っているのが聞こえた。

インギーはずぶ濡れの身体のまま、その場に座りこむしかなかった。


それからどのくらい経ったのだろう…
インギーの身体が芯から冷えた頃、インギーはまた歩き出した。

人の話し声を頼りに近付くと「サーリック」と書いた紙を見せた。

しかし、まるで薄汚い野良犬のように冷たく扱われ、突き飛ばされることも何度もあった。
それでもインギーは諦めなかった。
何度も何度も同じことを繰り返した。
ちゃんと話を聞いてくれる者はめったにいなかったが、それでも皆無というわけではなかった。
中には食べるものを与えてくれる者や、腕をひいて近くの村まで連れて行ってくれる者もいるにはいた。

しかし、それはあくまでも稀なこと。
物乞いのような生活を続けてなんとか生き延びてきたが、それももう限界かもしれない。
インギーの身体はすでに衰弱しきっていた。

 
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