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(!!…あんた、悪魔だったのか!)
「どうでも良いじゃないか、そんなこと…」
(あんたがあの男も殺ったんだな!)
「あぁ、あれか…
あいつは、やってはいけないことをやったからおしおきをしてやったまでだ。
だが、まだ死んではおらんぞ。
あと、数分は生きてるんじゃないか…?」
男の高笑いが響いた。
地の底から響くようなぞっとする声だ。
(……さすがは悪魔だな…)
「あいつは、たとえ死んでも悲しむ者など一人もいないつまらない男だ。
だいたい、このまま生きている方が奴にとっては不幸なのだ。
あいつの両の目は潰れ、声ももうおそらくは出ないだろうな、耳もほとんど聞こえない。
おまけに足や手もあんな風になったんじゃあ、どこまで治ることか…
いや、あいつの身体はもちろん最初からあんな風だったわけじゃない。
あれは私のおしおきのせいなのだがな…」
再び、男の高笑いが始まった。
胸が悪くなるような薄気味の悪い声に、トレルは耳を塞ぎたくなった。
(……もう助けてやれないのか…?)
「だから、言ってるだろう。
あいつにとってはこのままもう少し苦しんでから死んだ方が楽なのだ。
あんな不自由な身体で生きていくのは大変だろうからな。
こう見えても私は慈悲深い悪魔なのだぞ。」
男は肩を震わせ笑いを押し殺している。
(馬鹿な!どんな身体であろうと、生きてることは尊いことなんだ!
命は一つしかないんだ。助けられるのなら助けてやれよ!)
なぜそんな熱いことを言ってしまったのか、トレル自身にもよくわからなかった。
それは冷酷な目の前の悪魔に対する反感のようなものかもしれない。
「尊いだと…?」
男の顔から笑みが消え、灰色の瞳には怒りの色が灯った。
「……そうか、おまえの言う通りだな。
生きてる事は素晴らしい…
命は尊い…
おまえは本当に良いことを言うな…」
その時、血溜まりに沈む男の口から何事か聞き取れない叫びのようなものが発せられ、そのまま男は動かなくなった。
(……間に合わなかったか…気の毒に…)
「……心配するな。
大丈夫だ。」
男の片方の口端が上がった。
「どうでも良いじゃないか、そんなこと…」
(あんたがあの男も殺ったんだな!)
「あぁ、あれか…
あいつは、やってはいけないことをやったからおしおきをしてやったまでだ。
だが、まだ死んではおらんぞ。
あと、数分は生きてるんじゃないか…?」
男の高笑いが響いた。
地の底から響くようなぞっとする声だ。
(……さすがは悪魔だな…)
「あいつは、たとえ死んでも悲しむ者など一人もいないつまらない男だ。
だいたい、このまま生きている方が奴にとっては不幸なのだ。
あいつの両の目は潰れ、声ももうおそらくは出ないだろうな、耳もほとんど聞こえない。
おまけに足や手もあんな風になったんじゃあ、どこまで治ることか…
いや、あいつの身体はもちろん最初からあんな風だったわけじゃない。
あれは私のおしおきのせいなのだがな…」
再び、男の高笑いが始まった。
胸が悪くなるような薄気味の悪い声に、トレルは耳を塞ぎたくなった。
(……もう助けてやれないのか…?)
「だから、言ってるだろう。
あいつにとってはこのままもう少し苦しんでから死んだ方が楽なのだ。
あんな不自由な身体で生きていくのは大変だろうからな。
こう見えても私は慈悲深い悪魔なのだぞ。」
男は肩を震わせ笑いを押し殺している。
(馬鹿な!どんな身体であろうと、生きてることは尊いことなんだ!
命は一つしかないんだ。助けられるのなら助けてやれよ!)
なぜそんな熱いことを言ってしまったのか、トレル自身にもよくわからなかった。
それは冷酷な目の前の悪魔に対する反感のようなものかもしれない。
「尊いだと…?」
男の顔から笑みが消え、灰色の瞳には怒りの色が灯った。
「……そうか、おまえの言う通りだな。
生きてる事は素晴らしい…
命は尊い…
おまえは本当に良いことを言うな…」
その時、血溜まりに沈む男の口から何事か聞き取れない叫びのようなものが発せられ、そのまま男は動かなくなった。
(……間に合わなかったか…気の毒に…)
「……心配するな。
大丈夫だ。」
男の片方の口端が上がった。
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