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scene 9

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トレルは目を覚ました。


(ここは、どこだ…?)


暗い闇の中に薄明かりが射している。

辺りを見回し、そして何が起こったのかを考え『あっ』短く声を上げた。


(俺はオルジェのやつに無理やり体から魂を引き抜かれ、何かに閉じ込められたんだ)


そこまで思い出して、彼は首を傾げる。



それからどうなった?



(俺の体はどこに…そして、魂だけの俺がいるここはどこだ?)


最初の考えに戻ってきて、眉間に皺をよせたまま小さく唸る。

少し歩くと、壁があることに気づいた。

黒いガラスのようなものを隔て、向こうに何かが見える。


(森・・・?)


そして壁に沿って歩くと、この空間があまり広くない事が分かった。

ガラス張り小さな空間に閉じ込められているらしいのだが、嫌な感じがする。

外の景色が動いているのだ。

「ちっ、何がどうなってるんだ。こんな所でボーッとしている暇なんかないのに…わっ!」


突然、部屋がガクンと衝撃を受けた。


「???」

大きな目のようなものが、こっちを覗き込むように見ている。

「ニャーオ」

それが鳴いた。


(ね、猫か!?このデカイ目は猫の目なのか?)


トレルはゴクリと唾を呑んだ。

少しずつ状況が分かってくる。

どうやら小さな黒いものに閉じ込められた俺を、猫が口にくわえてどこかへ運んでいる最中らしい。

と、いきなり部屋がゴロゴロと不規則な回転を始め、トレルはなす統べもなく中で転げまわった。


「くそ、人で遊ぶなっ」


トレルは叫んだ。

が、もちろん外の猫に聞こえる訳はなく…こうなったら、この部屋を猫が壊し解放されるのを待つしかないようだ。


(早く自分の体を取り戻さねば・・・)


猫は遊んでいるうちに興奮してきたのか、部屋の揺れと回転が徐々に激しくなる。


その時。


猫の両手がトレルの入った石を、獲物を捕えるように力一杯上から押さえつけた。


バリン…!!


音がして砕け散り、その瞬間、トレルの魂は外へ開放された。


驚いた猫は飛び上がり、そして突然パタリと地面に倒れ動かなくなる。


(ふぅ、やれやれ…やっと自由になれた)


トレルはコキコキと首を鳴らして、明るい太陽の下へ戻れた事にとりあえず安堵すると立ち上がった。


(猫の体じゃ不便だが、実体があるだけましってとこだな…この際、贅沢は言ってられん)


ムクリと起き上がった黒猫は、トレルの意識を宿すと森の中を走り出した。 
 
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