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scene 9

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水鳥は湖底でキラキラと光るそれを、水に潜ると口にくわえ岸に上がった。

最初は飲もうとしたが、いささか硬い異物に一旦口から吐き出す。


コロリとそれは地面に転がった。


再び食べる事に挑戦しようとした時、草むらの影から黒猫が飛び出してきて水鳥に飛び掛ったが、残念なことに鳥は危険を察知して餌を残して飛び立つ。


水鳥が食べようとしたもの…それは、黒く光る美しい石だった。


黒猫は仕方なく石をくわえると、森の中へと姿を消した。



 *



 鈍い頭の痛みに、オルジェは顔を顰めた。


(またか…)


内心、呟く。

昨日から原因不明の頭痛に、彼は表にこそ出さないものの苛立っていた。

「どうした、オルジェ?」

隣を歩いていたトレルが、彼の様子に気づき声を掛ける。


「別に…何でもない」


オルジェは素っ気ない返事をした。

「顔色悪いぞ。殆ど眠ってないんだ、少しここらで休むか?」

「人間は不便な生き物だからな」

エルスールがしれっと横から口を挟む。


「……………」


中身は悪魔でも、体は人間のものだ。

彼らにとっては普通の事も、人間の体にとっては無理がある事もある。

本当はもう少し遠くまで足を運びたかったが、この辺りが限界のようだった。


「じゃあ、少しだけ休ませてもらうよ。皆はここで待っててくれ」


言って、どこかへ1人離れていこうとするオルジェの背中に、ケイトが声を掛ける。

「オルジェ、どこに行くの?」

「近くの川で顔を洗ってくる」

「じゃあ、あたしも一緒に…」


「悪いけど、1人にしてくれ」


冷たく彼女の言葉を遮ると、オルジェは林の中へと姿を消した。 
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