上 下
147 / 291
scene 8

20

しおりを挟む
「オルジェ…許して…私…私…」

「ケイト…何も言わなくて良いんだ…
わかってるよ、俺やトレルを助けたい一心だったんだろう?
それで、自分の身体を犠牲にして…ケイト…すまない。
おまえにそんな辛い想いをさせて…」

オルジェはケイトの涙を指で拭い、その顔に口付けの雨を降らせる。



「オルジェ…許してくれるの…?
こんな汚れた私を…」

「ケイトは汚れてなんかいないさ。
俺にとっては、天使以上の存在だよ。」

「オルジェ…」




トレルは、洞窟の外に漏れ聞こえるケイトの声にしのび笑いを浮かべていた。

(さすがに、キレる奴だ…
何から何まで計算しつくしてやがる…
あいつと手を組んだのは正解だったな…
さてと、やつらがお楽しみの間、俺は一眠りするか。)

トレルはその場にごろんと横になった。








「トレル!起きろよ。
何か食べないか。」

「あ…もうこんな時間か。そういえば、腹がすいたな。」

三人は洞窟に戻り、持ってきた食糧を黙って食べた。




「トレル…ケイトは…俺達のために…」

「オルジェ…もう言わないで。」

「ケイト…すまなかった。
さっきは俺も頭に血が上ってしまって…
そうだよな、おまえがあんなことをしたのは、オルジェやみんなのことを想ってのことなんだよな。
おまえがそんな蓮っ葉な女じゃないってことは、俺だってわかってたはずなのに…
本当にすまなかった!」

「トレル…もう言わないで!
私…とにかく、オルジェやみんなを助けたくって…私がなんとかしないといけないってその一心で…
いくら目的のためっていっても、自分でもよくあんな大胆なことが出来たと思うわ。」

ケイトはそう言うと、深く俯いた。



「女も男も、惚れた相手のためならなんでも出来るってことさ。」

「じゃあ、なにか?
あんたもエルスールのためには、なんでも出来るのか?」

「エルスール?……誰なの?」

「あぁ、ケイトはまだ知らなかったな。
……こいつったら、コンジュラシオンのくせに、悪魔の女を本気で愛してるんだ。」

「悪魔を…!!
トレル、本気なの?!
悪魔なんかと関わって大丈夫なの?」

「ケイト…エルスールは、みんなが考えているような悪魔じゃない。」

「でも…悪魔は悪魔だわ!」

「俺は彼女を信じてる…」



「トレル……本当か?」

不意に聞こえたその声に三人が一斉に振り向いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【改稿版】旦那様、どうやら御子がおデキになられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉ 

Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」  華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。  彼女の名はサブリーナ。  エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。  そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。  然もである。  公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。    一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。  趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。  そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。 「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。  ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。  拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのお話から始まります。  また設定はゆるっとふわふわ、また所々に胸糞な所も御座います。  前作より最寄り読みやすく書いている心算です。  誤字脱字はどうかご容赦くださいませ。    

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

魔法使いの幼馴染を助けたら俺も魔法使いになってしまった件について ~灰色の対極~

若椿 柳阿(わかつばき りゅうあ)
ファンタジー
突如として現れたトラックから幼馴染を庇ったら、なんやかんやで魔法使いになりました。……なんで? 第一部 ~あらすじ~ 主人公の在原 環は、幼馴染である赤原 葵とのデート中に突如として現れたトラックに轢かれてその人生を終える……。と思いきや、幼馴染は魔法使い!?  紆余曲折あったものの、交通事故を経て魔法使いとなってしまった環、彼は新たな非現実的な世界を歩んでいくことになる。 ※ほのぼのとかシリアスが入り乱れている現代魔法ファンタジーです。そのため、たまに温度差が激しい文章になったりします。楽しんでください← ※残酷描写ありですが、魔法発動の描写がアレなだけです。1-2を見たらだいたい分かると思います。 ※この作品は自傷行為を推奨しているわけではありません。すべて自己責任でお願いします。 ※使用している画像はちちぷいでのAI画像出力です。

司書ですが、何か?

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 16歳の小さな司書ヴィルマが、王侯貴族が通う王立魔導学院付属図書館で仲間と一緒に仕事を頑張るお話です。  ほのぼの日常系と思わせつつ、ちょこちょこドラマティックなことも起こります。ロマンスはふんわり。

月闇の扉

瑞原チヒロ
ファンタジー
*現在加筆修正&空白行挿入中 *21/8/12 第一章完了 四神が守護する大陸に≪月闇の扉≫が開く――。 時を同じくして、とある島国で王が亡くなった。第一子、王女ラナーニャは王の御霊を送るための儀式へと向かう――。 やがて来る王国の崩壊。島から弾き出された王女は記憶を失ったまま、とある旅人たちと出会う。 その出会いこそが彼女の運命の始まり、そして彼女は立ち上がる。 恋愛ちょこっと昔なつかし剣と魔法の旅モノファンタジー。 暇つぶし作品を目指していたのになぜかどシリアス。人がそこそこ死ぬので注意。めまぐるしく場面転換します。 「番外編」……本編より前の時代の短編です。なお本編と設定が違うところが多々ありますが、「本編のほうが正しい」ということで、よろしくお願いします。 表紙イラスト:いち様 pixiv:http://www.pixiv.net/member.php?id=1688339 ■小説家になろう・エブリスタ・カクヨムと並行掲載。

異世界でスローライフを満喫

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位に入ってました!本当にありがとうございます! タイトル通り異世界に行った主人公が異世界でスローライフを満喫…。出来たらいいなというお話です! ※カクヨム様にも投稿しております ※イラストはAIアートイラストを使用

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

妾の子だった転生勇者~魔力ゼロだと冷遇され悪役貴族の兄弟から虐められたので前世の知識を活かして努力していたら、回復魔術がぶっ壊れ性能になった

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
◆2024/05/31   HOTランキングで2位 ファンタジーランキング4位になりました! 第四回ファンタジーカップで21位になりました。皆様の応援のおかげです!ありがとうございます!! 『公爵の子供なのに魔力なし』 『正妻や兄弟姉妹からも虐められる出来損ない』 『公爵になれない無能』 公爵と平民の間に生まれた主人公は、魔力がゼロだからという理由で無能と呼ばれ冷遇される。 だが実は子供の中身は転生者それもこの世界を救った勇者であり、自分と母親の身を守るために、主人公は魔法と剣術を極めることに。 『魔力ゼロのハズなのになぜ魔法を!?』 『ただの剣で魔法を斬っただと!?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ……?』 『あいつを無能と呼んだ奴の目は節穴か?』 やがて周囲を畏怖させるほどの貴公子として成長していく……元勇者の物語。

処理中です...