上 下
135 / 291
scene 8

しおりを挟む
静かな森の中に、幼くも悩ましげなケイトの声が響く…

(なるほど、こういうことか…ついにあの女もルシファー様の手にかかったってわけか…)

少し離れた茂みの中で、リンクの入った袋を抱えたトレルが押し殺した笑いを浮かべた。

(女を手懐けるなんて簡単なもんだな。)



「ケイト…大丈夫か?
ごめんな、こんな所で…
怒ってる?」


ケイトは瞳にいっぱいの涙を浮かべたまま、ただ黙っていた。
オルジェは、ケイトの涙を指で拭う。



「ケイト…ごめん。許してくれ…
俺…自分の気持ちを押さえきれなくて…」

「……怒ってなんかないわ。
ただ…ちょっと、びっくりしただけ…」

「本当にごめん…」

「もう大丈夫だから…」

「ケイト…ありがとう。
俺は、嬉しいよ。
ケイトと結ばれて幸せだ…愛してるよ、ケイト。」

「私もよ…」

ケイトはそっとオルジェに身を寄せた。



「本当か?ランディよりもか?」

「当たり前でしょ!
ランディさんのことなんか、最初からなんとも思ってないわ。
私は昔からオルジェのことが好きだったの。
だから…後悔なんてしてない。」

「ケイト…!」



(……堕ちた…)



オルジェの口許に不敵な笑みが浮かんだことにケイトは気が付くことはなかった。




「悪魔のこともイアン牧師に聞いたわ…」

「悪魔のこと?」

「あ…あぁ、オルジェは何も心配しなくて良いのよ。
イアン牧師が必ずなんとかしてくれるから…」

「ケイト…そのことなんだけど…
実は、大変なことがわかったんだ。
……これから話すことは誰にも話さないって約束してくれるかい?」

「わかったわ。誰にも話さない。
何があったの?」

オルジェは躊躇いがちに話し始めた。



「……実は…イアン牧師のことなんだけど…
すぐには信じられないと思う…俺だって信じられなかった。
実は……イアン牧師こそが悪魔にのっとられて…いや、正しくはイアン牧師は悪魔と共存しているんだ。」

オルジェの告白に、ケイトは大きく瞳を見開いた。



「そんな馬鹿な!
イアン牧師はそんな人じゃないわ。
第一、イアン牧師は神に仕える身なのよ。
そんな人が悪魔と共存だなんて……」

「俺もなかなか信じられなかったよ。
だけど、そう考えればすべて辻褄があうんだ。
それに……奴は俺に高位の悪魔を宿そうとしている。」

「そ、そんなまさか!
牧師は立派なコンジュラシオンなのよ!
それに、どうしてそんなことがわかったの?
誰がそんなことを?」

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したら、勇者に師匠扱いされました(;゜∇゜)

はなまる
ファンタジー
乙女ゲームに転生した私。 しかも悪役令嬢らしい。 だけど、ゲーム通りに進める必要はないよね。 ヒロインはとってもいい子で友達になったし、攻略対象も眺め放題。 最高でした。 ...... 勇者候補の一人から師匠扱いされるまでは。 最初は剣と魔法のファンタジー。 少しずつ恋愛要素が入ってくる予定です。

ゴミスキル『空気清浄』で異世界浄化の旅~捨てられたけど、とてもおいしいです(意味深)~

夢・風魔
ファンタジー
高校二年生最後の日。由樹空(ゆうきそら)は同じクラスの男子生徒と共に異世界へと召喚された。 全員の適正職業とスキルが鑑定され、空は「空気師」という職業と「空気清浄」というスキルがあると判明。 花粉症だった空は歓喜。 しかし召喚主やクラスメイトから笑いものにされ、彼はひとり森の中へ置いてけぼりに。 (アレルギー成分から)生き残るため、スキルを唱え続ける空。 モンスターに襲われ樹の上に逃げた彼を、美しい二人のエルフが救う。 命を救って貰ったお礼にと、森に漂う瘴気を浄化することになった空。 スキルを使い続けるうちにレベルはカンストし、そして新たに「空気操作」のスキルを得る。 *作者は賢くありません。作者は賢くありません。だいじなことなのでもう一度。作者は賢くありません。バカです。 *小説家になろう・カクヨムでも公開しております。

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

転生赤ちゃんカティは諜報活動しています そして鬼畜な父に溺愛されているようです

れもんぴーる
ファンタジー
実母に殺されそうになったのがきっかけで前世の記憶がよみがえった赤ん坊カティ。冷徹で優秀な若き宰相エドヴァルドに引き取られ、カティの秘密はすぐにばれる。エドヴァルドは鬼畜ぶりを発揮し赤ん坊のカティを特訓し、諜報員に仕立て上げた(つもり)!少しお利口ではないカティの言動は周囲を巻き込み、無表情のエドヴァルドの表情筋が息を吹き返す。誘拐や暗殺などに巻き込まれながらも鬼畜な義父に溺愛されていく魔法のある世界のお話です。 シリアスもありますが、コメディよりです(*´▽`*)。 *作者の勝手なルール、世界観のお話です。突っ込みどころ満載でしょうが、笑ってお流しください(´▽`) *話の中で急な暴力表現など出てくる場合があります。襲撃や尋問っぽい話の時にはご注意ください! 《2023.10月末にレジーナブックス様から書籍を出していただけることになりました(*´▽`*)  規定により非公開になるお話もあります。気になる方はお早めにお読みください! これまで応援してくださった皆様、本当にありがとうございました!》

転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン… 紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢 座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!! もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。 全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。 作者は極度のとうふメンタルとなっております…

世界征服はじめました

 (笑)
ファンタジー
ののか みおんは普通の女子高生だった。天才女子高生であることをのぞけば。 ある朝、学校に行くのがめんどくさくなったみおんは思いついた。 「そうだ。世界征服しよう」 かくてののかみおんは世界征服をはじめた。

処理中です...