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scene 8
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「何で誰も通り掛からないのよーっ」
ケイトは旅を始めてから少し太った感のするリンクを肩に乗せたまま、ぜーぜーと息を切らし恨めしそうに呟いた。
ランディの村までは、どんなに頑張って歩いても後五日はかかる。
日も暮れかかる黄昏時、ケイトの疲労はピークを迎えていた。
「少し休んだらどうだ?」
リンクが声を掛けると、無言で頷いた彼女は道端の木の根元に座り込む。
「そ…そうする…」
袋の中から水筒を取り出すと、水を一口含んでゆっくりと喉に流し込む。
「行きがけはいい具合に荷馬車が通りかかったのにな」
そう上手くいかないか…リンクは荷物の中に顔を突っ込むとリンゴを取り出してかじり始めた。
「ちょっと、あんた食べ過ぎなんじゃないの?」
ケイトは呆れ顔でリュタンの手から、リンゴを取り上げる。
「何するんだよ、ずっと歩きっぱなしだからお腹すくじゃないか」
「あんた、あたしの肩に乗ってるだけで、運動してないじゃない!!太ったら承知しないからね」
「そんなぁ~」
リンクは情けない声をあげると、ガックリと肩を落とした。
「まったく…一日でも早くランディたちの所に戻って、オルジェの事を話さないといけないんだから!!」
ケイトはそう言うと、取り上げたリンゴをガブリとかじった。
*
「何だ、これは」
エルスールはランディが湖の中から拾ってきた黒い石を親指と人差し指で摘んで、太陽の光に翳して見る。
「さぁ、俺にも分からんが昨日オルジェがここに水を汲みにきた際に、投げ捨てたものだと思う」
「……オルジェが?」
「あぁ…。俺が水を汲みに行くと言ったら、自分が行ってくると言い張ってな。何か一人になりたい様子がおかしかったから、こっそり後をつけてみたんだ。そしたらアイツ、ポケットから取り出した何かに話し掛けて、それをここから投げ捨てた…」
「それがこの石だと?」
「確信はないが。ただ嫌に眩しい光を放っている水面の底にあったのがこれだったんだ。捨てた物とは違うにしても、ひどく気になる…」
「…………」
エルスールは再び難しい表情になって、黙り込んだ。
「どうしたんだ。さっきから変だぞ?」
「なぁ、ランディ…」
彼女は言い淀む。
「何だ?」
「…トレルはその…本物だと思うか…?」
ケイトは旅を始めてから少し太った感のするリンクを肩に乗せたまま、ぜーぜーと息を切らし恨めしそうに呟いた。
ランディの村までは、どんなに頑張って歩いても後五日はかかる。
日も暮れかかる黄昏時、ケイトの疲労はピークを迎えていた。
「少し休んだらどうだ?」
リンクが声を掛けると、無言で頷いた彼女は道端の木の根元に座り込む。
「そ…そうする…」
袋の中から水筒を取り出すと、水を一口含んでゆっくりと喉に流し込む。
「行きがけはいい具合に荷馬車が通りかかったのにな」
そう上手くいかないか…リンクは荷物の中に顔を突っ込むとリンゴを取り出してかじり始めた。
「ちょっと、あんた食べ過ぎなんじゃないの?」
ケイトは呆れ顔でリュタンの手から、リンゴを取り上げる。
「何するんだよ、ずっと歩きっぱなしだからお腹すくじゃないか」
「あんた、あたしの肩に乗ってるだけで、運動してないじゃない!!太ったら承知しないからね」
「そんなぁ~」
リンクは情けない声をあげると、ガックリと肩を落とした。
「まったく…一日でも早くランディたちの所に戻って、オルジェの事を話さないといけないんだから!!」
ケイトはそう言うと、取り上げたリンゴをガブリとかじった。
*
「何だ、これは」
エルスールはランディが湖の中から拾ってきた黒い石を親指と人差し指で摘んで、太陽の光に翳して見る。
「さぁ、俺にも分からんが昨日オルジェがここに水を汲みにきた際に、投げ捨てたものだと思う」
「……オルジェが?」
「あぁ…。俺が水を汲みに行くと言ったら、自分が行ってくると言い張ってな。何か一人になりたい様子がおかしかったから、こっそり後をつけてみたんだ。そしたらアイツ、ポケットから取り出した何かに話し掛けて、それをここから投げ捨てた…」
「それがこの石だと?」
「確信はないが。ただ嫌に眩しい光を放っている水面の底にあったのがこれだったんだ。捨てた物とは違うにしても、ひどく気になる…」
「…………」
エルスールは再び難しい表情になって、黙り込んだ。
「どうしたんだ。さっきから変だぞ?」
「なぁ、ランディ…」
彼女は言い淀む。
「何だ?」
「…トレルはその…本物だと思うか…?」
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