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「こっちだ。」

「…ランディ、足をどうかしたのか?」

「あ…あぁ…さっき、宝石を隠しに行く時にちょっと転んでな…」

「そうか…気を付けろよ。」



ランディは、血溜まりのあった場所へトレルを案内した。
あたりは草が踏みしだかれ、明らかに何者かが争ったような痕跡が感じられる。

地面に広がるどす黒い染みが、何者かの流した大量の血の跡だということは、トレルにも容易にわかった。

「この分じゃ…おそらく生きてはいない…」

「……じゃあ、死体はどこにある?
死体が一人で歩いて行ったとでもいうのか?」

「それは、きっと殺した奴が…」

「………」

「血の跡は、こっちに続いていた。
おそらく森を出たのだと思う。」

トレルはうずくまり、どす黒い地面の染みをじっとみつめていた。

「立てよ、トレル!
どんなことであれ、その目で真実をみなくちゃな。」

「わかってる!
俺は…諦めてはいない。
エルスールは必ず生きている!
俺が…必ず、彼女を助ける!」

「ようし、その意気だ!」

ランディはトレルに手を差しのべた。



「……しかし、あんたも変わってるな。」

「どういうことだ?」

「どういうって…
悪魔の女を本気で愛してるんだろ?
そんな奴、初めてだよ。」

「……そうだろうな…」

「それと、本気で人間の男を愛している悪魔っていうのも初めてだな。」

「馬鹿な女と、馬鹿な男が、たまたま出会ったってことだな…」

「…うらやましい話だぜ。」



二人が森を出た頃、すでにあたりは陽が傾きかけていた。

「暗くなって来たな。
この先に、廃屋がある。今夜はそこで休むことにしよう。」 
 
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