深淵に眠る十字架

scene 6

１１

フォーラスが、呪文のようなものを唱えると、何もない所に空気の揺らめきが出現し、その中から村人達が現れた。

「父さん！」

「ランディ！！」

「みんな、無事か？」

「あぁ、みんな大丈夫だ！」

「しかし、一体どうなってるんだ？」

「話は帰ってからだ。
じゃ、エルスール…後は任せた。」

「な、何を…！
それでは話が違うぞ！」

「俺がお前とどんな話をしたってんだ？知らねぇな…」

ランディはその場に二人を残し、村人達と村へ帰って行った。



「畜生！！」

「さてと…どう料理するかな…」

エルスールの瞳が冷たく光った。



＊



 「そうか、やっぱりあいつは悪魔だったんだな。
それで、さっきの女性は？」

「あ…あれは…そ、その…悪魔…祓いみたいな者だな。
あの女…エルスールっていうんだけど、エルスールの彼氏があの悪魔に身体を乗っ取られて、それで俺達協力してやっと父さん達を救い出せたってわけなんだ。」

「そうだったのか、しかし、大丈夫なのか？
そんな凶悪な悪魔と二人っきりにしておいて…」

「あぁ、エルスールは凄腕の悪魔祓いだからな。」
　
「それで、エルスールさんの彼は大丈夫なのか？」

「あぁ、ちょっと弱ってるけど大丈夫さ。
今、俺の部屋で眠ってる。」

「誰かついてなくて良いのか？」

「そうだな、じゃ…ちょっと見てくるよ。」

ランディは二階の部屋に駆けあがった。



「あ、ランディさん！」

「アルグ、すまなかったな。
どうだ？トレルの様子は？」

「ずっと眠ってますよ。それで村の人達は？」

「さっき、みんな戻ったよ。」

「そうですか、それは良かった。
それでは、フォーラスとエルスールは？」

「フォーラスは…エルスールに任せた…」

「えっっ！そ、それじゃあ、フォーラスは…」

「まぁ、そんなことはどうでも良いじゃないか！
トレルは元に戻ったし、村のみんなも戻って来たし…
後は、オルジェのことだけだな。」

「オ、オルジェがどうかしたのか…」

「トレル、気が付いたのか？」

「あんた、さっきの…」

「俺はランディ、この家の者だ。
ケイトやオルジェとも知り合いだ。
あ、エルスールともな、」

「エルスール…彼女はどこだ？」

「あぁ、彼女なら心配ない。
ちょっとゴミを捨てに行っただけだ、じきに戻るさ。」

「そうか…」

トレルはようやくほっとしたような顔に変わった。