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少年はエルスールの赤い口を開けた腕の傷口を細い指でなぞると、その血をペロリと舐めた。
その仕草が外見とそぐわず、彼女は怪訝に眉をひそめる。
彼はチラリと視線を合わせると、
「人間に飼われた悪魔の味がする」
からかい混じりクッと短く笑う。
「なっ…」
言い当てられて、エルスールはカッとなった。
「怒ると無駄に体力を消耗するよ。それより助けて欲しいんだろ?」
「………うるさい」
「女性は素直な方が可愛いと思うんだが…と言うのは知人からの受け売りだがな」
「………?」
エルスールは訝しげに眉を顰めた。
今の言葉、聞いた事がある。
トレルがよく使っていた言葉と同じだ…。
まさか、この少年…。
「お前、オルジェか?」
それを聞いて、少年は口だけで笑った。
「そう呼ばれる事もある。それよりどうする、怪我は治さなくていいのか?」
「なぜお前がここに」
「今はオレが聞いてるんだ。どうする?」
「た……頼む……」
「そうそう、素直が1番だ」
オルジェは満足げに頷くと、エルスールの見ている前であっという間に体中の傷を治していく。
最後の傷が塞がると嘘のように体が軽くなり、彼女はオルジェが拾い集めてくれた服を身につけた。
「助かった、礼を言う」
少年に頭を下げると、
「お前が生きたいと願ったから分けてやった命だ。粗末に扱ったら承知しないからな」
彼はそれだけ言って歩き出した。
「待ってくれ。お前の本当の名前は何だ?」
「まだ聞くのか」
少年は背を向けたまま、呆れた声を出す。
「こんな事、人間に出来る訳ないからな」
半端ではない程の傷を、あっという間に治してみせたのだ。
少年が《ただの悪魔》とは思えなかった。
すると彼は仕方ないなぁと肩を竦めて、
「ルシファー」
とだけ言うと、森の中に姿を消した。
「う、嘘だろ」
エルスールは彼の名前を聞いて、茫然自失に呟いた。
その仕草が外見とそぐわず、彼女は怪訝に眉をひそめる。
彼はチラリと視線を合わせると、
「人間に飼われた悪魔の味がする」
からかい混じりクッと短く笑う。
「なっ…」
言い当てられて、エルスールはカッとなった。
「怒ると無駄に体力を消耗するよ。それより助けて欲しいんだろ?」
「………うるさい」
「女性は素直な方が可愛いと思うんだが…と言うのは知人からの受け売りだがな」
「………?」
エルスールは訝しげに眉を顰めた。
今の言葉、聞いた事がある。
トレルがよく使っていた言葉と同じだ…。
まさか、この少年…。
「お前、オルジェか?」
それを聞いて、少年は口だけで笑った。
「そう呼ばれる事もある。それよりどうする、怪我は治さなくていいのか?」
「なぜお前がここに」
「今はオレが聞いてるんだ。どうする?」
「た……頼む……」
「そうそう、素直が1番だ」
オルジェは満足げに頷くと、エルスールの見ている前であっという間に体中の傷を治していく。
最後の傷が塞がると嘘のように体が軽くなり、彼女はオルジェが拾い集めてくれた服を身につけた。
「助かった、礼を言う」
少年に頭を下げると、
「お前が生きたいと願ったから分けてやった命だ。粗末に扱ったら承知しないからな」
彼はそれだけ言って歩き出した。
「待ってくれ。お前の本当の名前は何だ?」
「まだ聞くのか」
少年は背を向けたまま、呆れた声を出す。
「こんな事、人間に出来る訳ないからな」
半端ではない程の傷を、あっという間に治してみせたのだ。
少年が《ただの悪魔》とは思えなかった。
すると彼は仕方ないなぁと肩を竦めて、
「ルシファー」
とだけ言うと、森の中に姿を消した。
「う、嘘だろ」
エルスールは彼の名前を聞いて、茫然自失に呟いた。
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