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「村の周囲は森が広がっているから、土地勘のない人間は迷い易い。いくつか心当たりのある場所もあるから、案内してやるよ」
言って彼はアルグを抱き上げ、リンクの隣の席に戻してやるとケイトの肩に手を掛け促す。
「さ、行こう。空が暗くなる前に」
「あ、うん…じゃあリンク、アルグ。もし行き違いでオルジェが帰ってきたら、私は大丈夫だからって言って」
「分かった」
「行ってくるわね」
そして2人は出て行った。
「はぁ、ランディさんのお蔭で助かりましたよ」
ホッと胸をなで下ろす仕草をするアルグを見て、
「そうかな」
リンクはニヤニヤと笑みを浮かべながら呟く。
「?」
「何もないとは思えないけどな…」
「おじさん?」
アルグは言葉の意味が分からなくて、小首を傾げた。「ま、そのうち分かるさ」
*
その頃、オルジェとトレルはランディの家に向かう途中だった。
「ほぅ、あのじゃじゃ馬も一緒にいるのか」
トレルは今までの経緯を聞いて、こめかみをひくつかせる。
「…何か色々あったらしいな…そう言えば、体は大丈夫なのか?」
ケイトに悪魔の事を聞いていたオルジェは、さり気なく話題をその話に振ってみた。
「その様子だと全部知ってるんだな」
トレルは軽くタメ息をつく。
「あぁ、今はもう何ともない。エルスールが薬を持ってきてくれたからな」
「エルスール?」
見知らぬ女性の名前に、オルジェは訝しげに眉をひそめた。
「あ…いや、それは…」
うっかり自分の中に飼っている悪魔の名前を出してしまった事に、トレルはうろたえてしどろもどろになる。
「ここに来る途中に、また女を口説いてたんだな。不良牧師っ!!」
だが一体何を想像したのか、オルジェは顔を赤らめると、いきなり歩く速度を上げた。
「おい、待てよ。勝手に一人で行くな!!道に迷うぞ」
「うっせーよ!!ほんの一瞬でもテメーとの再会を喜んだオレが馬鹿だった。この女ったらし、ついてくんなっ」
「オルジェ、違うんだ。これには訳が…」
「………」
トレルが言い訳をすればするほど、二人の距離が離れていく。
その20分後………オルジェとトレルは本当に道が分からなくなって、迷子になってしまうのだ。
そして森の中に大量の血だまりを発見するのである----------。
言って彼はアルグを抱き上げ、リンクの隣の席に戻してやるとケイトの肩に手を掛け促す。
「さ、行こう。空が暗くなる前に」
「あ、うん…じゃあリンク、アルグ。もし行き違いでオルジェが帰ってきたら、私は大丈夫だからって言って」
「分かった」
「行ってくるわね」
そして2人は出て行った。
「はぁ、ランディさんのお蔭で助かりましたよ」
ホッと胸をなで下ろす仕草をするアルグを見て、
「そうかな」
リンクはニヤニヤと笑みを浮かべながら呟く。
「?」
「何もないとは思えないけどな…」
「おじさん?」
アルグは言葉の意味が分からなくて、小首を傾げた。「ま、そのうち分かるさ」
*
その頃、オルジェとトレルはランディの家に向かう途中だった。
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「…何か色々あったらしいな…そう言えば、体は大丈夫なのか?」
ケイトに悪魔の事を聞いていたオルジェは、さり気なく話題をその話に振ってみた。
「その様子だと全部知ってるんだな」
トレルは軽くタメ息をつく。
「あぁ、今はもう何ともない。エルスールが薬を持ってきてくれたからな」
「エルスール?」
見知らぬ女性の名前に、オルジェは訝しげに眉をひそめた。
「あ…いや、それは…」
うっかり自分の中に飼っている悪魔の名前を出してしまった事に、トレルはうろたえてしどろもどろになる。
「ここに来る途中に、また女を口説いてたんだな。不良牧師っ!!」
だが一体何を想像したのか、オルジェは顔を赤らめると、いきなり歩く速度を上げた。
「おい、待てよ。勝手に一人で行くな!!道に迷うぞ」
「うっせーよ!!ほんの一瞬でもテメーとの再会を喜んだオレが馬鹿だった。この女ったらし、ついてくんなっ」
「オルジェ、違うんだ。これには訳が…」
「………」
トレルが言い訳をすればするほど、二人の距離が離れていく。
その20分後………オルジェとトレルは本当に道が分からなくなって、迷子になってしまうのだ。
そして森の中に大量の血だまりを発見するのである----------。
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