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「あぁ、俺は五日程この村を離れてたからな。
昨日帰って来たんだが、そしたら、まるで神隠しにでもあったように誰もいないんだ…」

「思い当たるフシはないのか?」

「全くないな。
俺が生まれて以来、こんなことは初めてだ。」

「おかしいわね…」

「ただ…」

「なにかあるのか?」

ランディの表情が、険しいものに変わった。



「ホープシーの町の近くで…悪魔を見掛けた…」

「悪魔…?」

「あぁ、それがこの村のことと関係あるかどうかはわからないが…」

「……もし、関係あるとしたら厄介なことになるな。」

「厄介なことって、何なんだよ、リンク。」

「考えてもみろよ。
村人全員がいきなりいなくなるなんて、どう考えても尋常なことじゃないぞ。
争った形跡もない。
まるで神隠しみたいにって、さっきランディが言ったけど、術でも使わなければそんなことは出来ないんじゃないか?
それに…」

「それに、何なんだ?」

「覚えてないか?
ここへ来る前、トレルが通りすぎた時に悪魔の気配がしたって言っただろ?」

「では、またトレルさんが悪魔に身体をのっとられて、この村の人達を…?」

「おい!それはどういう話なんだ?
トレルって、誰なんだ?」

「アルグ、いいかげんなことは言うな!
トレルはそんなことはしない!!」

オルジェは感情的な声を上げ、アルグを睨み付けた。



「…オルジェ…でも、ボク達の村が焼き払われたのは事実なんだぞ…」

「村を焼き払われた?
なんだ?そのトレルって奴は、悪魔の手先なのか?!」

「そうじゃないっ!
トレルは…トレルは悪魔に身体をのっとられただけなんだ。
そんなことをしたのはあいつの意思じゃない!」

「ランディさん、それは本当です。
トレルは悪魔に危うく殺されかけたんですから。
私が会った時も、おかしな薬を飲まされたせいでかなり弱ってましたし…」

「でも、そんなに弱ってたんならなおさらまたのっとられやすいんじゃないか?」

「あ……」

「何が、あ…だよ!
ケイト、おまえもトレルの幼馴染みなら、もっとあいつのことを信じてやれよ!」

オルジェは苛立ったように席を立ち、どこかへ立ち去った。


「ランディさん、トレルはオルジェの兄さんみたいなものなの…
だから、心配して…」

「そうか、わかった…
しかし、こうなるとやっぱり今回のことには悪魔が関わってやがるのか?!」

「その可能性は高いな…」

「畜生!どうすりゃ良いんだ!」 

ランディは乱暴にテーブルを拳で叩きつけた。 
 
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