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scene 5

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「た、すけ…てく、れ」

エルスールはそれを取ったが、剣を鞘に収めなかった。

「まだだ。お前はまだ、何かいいものを隠し持っているだろう」

エルスールは瞳を細めると、真紅の唇をチロリと舐める仕草をした。

「駄目だ…これだけは、これだけはいくら上級悪魔であろうが渡せない」

「ならば、その命…もらい受けよう」

白銀の剣を躊躇いもなく頭上に振り上げた時、


「ま、待て!!ワシが死んだら、たくさんの人間どもも死ぬ事になるぞ!!」

フォーラスが思わぬ事を叫んだ。


エルスールは動きを止める。

「貴様…何を言っている?」

「ワシはこの先にある村人を、異空間に閉じ込めているんだ。ワシが死んだら、そいつらもそこから出られず死ぬぞ」

「そんな事は私の知る所ではない」

言い放つと、エルスールは再び剣を握り直した。

「散れ…」

「トレルの旦那が知ったらどう思うかな」

「!!」

エルスールの心が揺らいだのを見て、フォーラスは駆け引きが成功した事を確信した。

「あんたが欲しがっているモノを諦めてくれれば、ワシは村人を解放しようじゃないか」

「……………」

なぜ見知らぬ人間を助けなければならないのかと思ったが、フォーラスの持っているものにも実はさほど興味はなかったので、エルスールは要求を呑む事にした。

「いいだろう…だが、もし口からの出任せであれば、どうなるか分かっているだろうな」

「もちろんだ」

フォーラスは何度も頷きながらエルスールの気が変わらない内にと、先に立って森の中を歩き出した。 
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