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scene 5

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振り返った視線の先にいる者を見て、悪魔の表情が強張った。

「き、貴様はエルスール…」

悪魔というものは普段、同じ場所で出会う事は滅多にない。

ある程度縄張りがあって、互いを干渉しないよう暗黙のルールがあるからだ。

「久しぶりだな、三流悪魔」

ゆっくりと近づきながら、彼女は口端を上げる。

「何しに来た!ここはワシのテリトリーだぞ…それが分かっていて入って来たのか」

「あぁ、すまないな。私はこの場所ではなく、お前に用があってきたんだ。それが済んだらさっさと帰るから、心配するな」

「ワシはお前に用などないぞ」

「お前はなくても、私にはあるんだよ…」

そういうと、エルスールはフォーラスの前に手を出した。

「出せ」

「何だ、いきなり」

「解毒薬を持っているだろう?」

解毒薬と聞いて、フォーラスは内心ホッとする。

一瞬、石を出せと言われたかと思ったからだ。

「持っているが、悪魔には必要あるまい」

「誰が自分に使うと言った…」

エルスールは苛立った表情になる。

「まさか人間、とでも」

「あぁ、そうさ。お前が騙して毒を飲ませたトレルのためだよ」

「ははっ…それは笑える。上級悪魔が人間の為に動くとは!!」

フォーラスは滑稽だと、腹を抱えて笑い出した。

「やるなぁ、トレルの旦那も。上級悪魔を手懐けるなんて」

「…」

「一体何を餌にして、契約を結ばせたん、だか」

喉元に剣の切っ先を突きつけられ、フォーラスは話すのを止めた。

エルスールの冷酷な瞳がフォーラスを見下ろす。

「私は機嫌が悪いんだ。出さぬなら、その体…バラバラに切り刻んでやる」

ググッと剣が皮膚に食い込む感触に、フォーラスは目を白黒させて懐から袋ごと薬を取り出した。 
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