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振り返った視線の先にいる者を見て、悪魔の表情が強張った。
「き、貴様はエルスール…」
悪魔というものは普段、同じ場所で出会う事は滅多にない。
ある程度縄張りがあって、互いを干渉しないよう暗黙のルールがあるからだ。
「久しぶりだな、三流悪魔」
ゆっくりと近づきながら、彼女は口端を上げる。
「何しに来た!ここはワシのテリトリーだぞ…それが分かっていて入って来たのか」
「あぁ、すまないな。私はこの場所ではなく、お前に用があってきたんだ。それが済んだらさっさと帰るから、心配するな」
「ワシはお前に用などないぞ」
「お前はなくても、私にはあるんだよ…」
そういうと、エルスールはフォーラスの前に手を出した。
「出せ」
「何だ、いきなり」
「解毒薬を持っているだろう?」
解毒薬と聞いて、フォーラスは内心ホッとする。
一瞬、石を出せと言われたかと思ったからだ。
「持っているが、悪魔には必要あるまい」
「誰が自分に使うと言った…」
エルスールは苛立った表情になる。
「まさか人間、とでも」
「あぁ、そうさ。お前が騙して毒を飲ませたトレルのためだよ」
「ははっ…それは笑える。上級悪魔が人間の為に動くとは!!」
フォーラスは滑稽だと、腹を抱えて笑い出した。
「やるなぁ、トレルの旦那も。上級悪魔を手懐けるなんて」
「…」
「一体何を餌にして、契約を結ばせたん、だか」
喉元に剣の切っ先を突きつけられ、フォーラスは話すのを止めた。
エルスールの冷酷な瞳がフォーラスを見下ろす。
「私は機嫌が悪いんだ。出さぬなら、その体…バラバラに切り刻んでやる」
ググッと剣が皮膚に食い込む感触に、フォーラスは目を白黒させて懐から袋ごと薬を取り出した。
「き、貴様はエルスール…」
悪魔というものは普段、同じ場所で出会う事は滅多にない。
ある程度縄張りがあって、互いを干渉しないよう暗黙のルールがあるからだ。
「久しぶりだな、三流悪魔」
ゆっくりと近づきながら、彼女は口端を上げる。
「何しに来た!ここはワシのテリトリーだぞ…それが分かっていて入って来たのか」
「あぁ、すまないな。私はこの場所ではなく、お前に用があってきたんだ。それが済んだらさっさと帰るから、心配するな」
「ワシはお前に用などないぞ」
「お前はなくても、私にはあるんだよ…」
そういうと、エルスールはフォーラスの前に手を出した。
「出せ」
「何だ、いきなり」
「解毒薬を持っているだろう?」
解毒薬と聞いて、フォーラスは内心ホッとする。
一瞬、石を出せと言われたかと思ったからだ。
「持っているが、悪魔には必要あるまい」
「誰が自分に使うと言った…」
エルスールは苛立った表情になる。
「まさか人間、とでも」
「あぁ、そうさ。お前が騙して毒を飲ませたトレルのためだよ」
「ははっ…それは笑える。上級悪魔が人間の為に動くとは!!」
フォーラスは滑稽だと、腹を抱えて笑い出した。
「やるなぁ、トレルの旦那も。上級悪魔を手懐けるなんて」
「…」
「一体何を餌にして、契約を結ばせたん、だか」
喉元に剣の切っ先を突きつけられ、フォーラスは話すのを止めた。
エルスールの冷酷な瞳がフォーラスを見下ろす。
「私は機嫌が悪いんだ。出さぬなら、その体…バラバラに切り刻んでやる」
ググッと剣が皮膚に食い込む感触に、フォーラスは目を白黒させて懐から袋ごと薬を取り出した。
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