11 / 291
scene 1
11
しおりを挟む
*
それからさらに一週間が過ぎたある日のこと…
トレルはまたオルジェの様子を見にラスティア山を訪れた。
しかし、おかしなことにオルジェの姿がどこにも見えないのだ。
(行き違いになったのだろうか?)
トレルは鉱夫達の簡易宿舎に行き、オルジェのことを訊ねた。
「あぁ、オルジェなら昨日山を降りたぜ。」
「そうか…ありがとう。」
やはり行き違いになってしまったのだ。
奴は今ごろ、水晶を持って教会に行っているのかもしれないな…
トレルがそう考えた時、一人の男がトレルに声をかけてきた。
「よぅ、あんた、もしかしてトレルかい?」
「あぁ、そうだが。」
「オルジェから手紙を預かってるぜ!」
「手紙を…?」
トレルは急に胸騒ぎを感じた。
無造作に封を開けると、そこには見慣れた字でこう書いてあった。
「どうやら『暗闇に眠る小さな星』はこの町にはないようだから、他の町を探してみることにする。
イアン牧師が探すのに期限はないと言ったから、いつ帰るかはわからない。」
「くそっ!やられた!!」
トレルは手紙を握り締め、教会へ走った。
*
(今頃、あの二人、驚いてるだろうなぁ…)
そんなことを考えて、オルジェはこみあげる笑いをおさえきれずに肩を震わせた。
この数週間、真面目に作業を続けたおかげでそれなりの金がもらえた。
今までは何をするにもイアン牧師かトレルの許可が必要で、自由になる金等持たせてもらえた試しはなかった。
だから、町を出ることもとても無理だと思っていたのだが、思わぬことで仕事をする機会を得ることが出来、そして、「暗闇に眠る小さな星を探す」という大義名分を掲げてオルジェは町を出ることまでが出来たのだ。
(イアン牧師は、「この町の中でみつけること」とは言わなかったもんなぁ…)
オルジェは下を向いて笑いを噛み殺し、やがて大きな声で笑った。
それは煩わしいものから解き放たれた勝者の笑いだ。
(さて、どっちへ行こうか…
とにかく少しでもあの町から遠くへ…! )
それからさらに一週間が過ぎたある日のこと…
トレルはまたオルジェの様子を見にラスティア山を訪れた。
しかし、おかしなことにオルジェの姿がどこにも見えないのだ。
(行き違いになったのだろうか?)
トレルは鉱夫達の簡易宿舎に行き、オルジェのことを訊ねた。
「あぁ、オルジェなら昨日山を降りたぜ。」
「そうか…ありがとう。」
やはり行き違いになってしまったのだ。
奴は今ごろ、水晶を持って教会に行っているのかもしれないな…
トレルがそう考えた時、一人の男がトレルに声をかけてきた。
「よぅ、あんた、もしかしてトレルかい?」
「あぁ、そうだが。」
「オルジェから手紙を預かってるぜ!」
「手紙を…?」
トレルは急に胸騒ぎを感じた。
無造作に封を開けると、そこには見慣れた字でこう書いてあった。
「どうやら『暗闇に眠る小さな星』はこの町にはないようだから、他の町を探してみることにする。
イアン牧師が探すのに期限はないと言ったから、いつ帰るかはわからない。」
「くそっ!やられた!!」
トレルは手紙を握り締め、教会へ走った。
*
(今頃、あの二人、驚いてるだろうなぁ…)
そんなことを考えて、オルジェはこみあげる笑いをおさえきれずに肩を震わせた。
この数週間、真面目に作業を続けたおかげでそれなりの金がもらえた。
今までは何をするにもイアン牧師かトレルの許可が必要で、自由になる金等持たせてもらえた試しはなかった。
だから、町を出ることもとても無理だと思っていたのだが、思わぬことで仕事をする機会を得ることが出来、そして、「暗闇に眠る小さな星を探す」という大義名分を掲げてオルジェは町を出ることまでが出来たのだ。
(イアン牧師は、「この町の中でみつけること」とは言わなかったもんなぁ…)
オルジェは下を向いて笑いを噛み殺し、やがて大きな声で笑った。
それは煩わしいものから解き放たれた勝者の笑いだ。
(さて、どっちへ行こうか…
とにかく少しでもあの町から遠くへ…! )
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
聖女の地位も婚約者も全て差し上げます〜LV∞の聖女は冒険者になるらしい〜
みおな
ファンタジー
ティアラ・クリムゾンは伯爵家の令嬢であり、シンクレア王国の筆頭聖女である。
そして、王太子殿下の婚約者でもあった。
だが王太子は公爵令嬢と浮気をした挙句、ティアラのことを偽聖女と冤罪を突きつけ、婚約破棄を宣言する。
「聖女の地位も婚約者も全て差し上げます。ごきげんよう」
父親にも蔑ろにされていたティアラは、そのまま王宮から飛び出して家にも帰らず冒険者を目指すことにする。
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
攫われた聖女~魔族って、本当に悪なの?~
月輪林檎
ファンタジー
人々を恐怖に陥れる存在や魔族を束ねる王と呼ばれる魔王。そんな魔王に対抗できる力を持つ者を勇者と言う。
そんな勇者を支える存在の一人として、聖女と呼ばれる者がいた。聖女は、邪な存在を浄化するという特性を持ち、勇者と共に魔王を打ち破ったとさえ言われている。
だが、代が変わっていく毎に、段々と聖女の技が魔族に効きにくくなっていた……
今代の聖女となったクララは、勇者パーティーとして旅をしていたが、ある日、勇者にパーティーから出て行けと言われてしまう。
勇者達と別れて、街を歩いていると、突然話しかけられ眠らされてしまう。眼を覚ました時には、目の前に敵である魔族の姿が……
人々の敵である魔族。その魔族は本当に悪なのか。クララは、魔族と暮らしていく中でその事について考えていく。
異世界転移で生産と魔法チートで誰にも縛られず自由に暮らします!
本条蒼依
ファンタジー
主人公 山道賢治(やまみちけんじ)の通う学校で虐めが横行
そのいじめを止めようと口を出した瞬間反対に殴られ、後頭部を打ち
死亡。そして地球の女神に呼ばれもう一つの地球(ガイアース)剣と魔法の世界
異世界転移し異世界で自由に楽しく生きる物語。
ゆっくり楽しんで書いていけるといいなあとおもっています。
更新はとりあえず毎日PM8時で月曜日に時々休暇とさせてもおうと思っています。
星マークがついている話はエッチな話になっているので苦手な方は注意してくださいね。
もしかしてこの世界美醜逆転?………はっ、勝った!妹よ、そのブサメン第2王子は喜んで差し上げますわ!
結ノ葉
ファンタジー
目が冷めたらめ~っちゃくちゃ美少女!って言うわけではないけど色々ケアしまくってそこそこの美少女になった昨日と同じ顔の私が!(それどころか若返ってる分ほっぺ何て、ぷにっぷにだよぷにっぷに…)
でもちょっと小さい?ってことは…私の唯一自慢のわがままぼでぃーがない!
何てこと‼まぁ…成長を願いましょう…きっときっと大丈夫よ…………
……で何コレ……もしや転生?よっしゃこれテンプレで何回も見た、人生勝ち組!って思ってたら…何で周りの人たち布被ってんの!?宗教?宗教なの?え…親もお兄ちゃまも?この家で布被ってないのが私と妹だけ?
え?イケメンは?新聞見ても外に出てもブサメンばっか……イヤ無理無理無理外出たく無い…
え?何で俺イケメンだろみたいな顔して外歩いてんの?絶対にケア何もしてない…まじで無理清潔感皆無じゃん…清潔感…com…back…
ってん?あれは………うちのバカ(妹)と第2王子?
無理…清潔感皆無×清潔感皆無…うぇ…せめて布してよ、布!
って、こっち来ないでよ!マジで来ないで!恥ずかしいとかじゃないから!やだ!匂い移るじゃない!
イヤー!!!!!助けてお兄ー様!
異世界でゆるゆる生活を満喫す
葉月ゆな
ファンタジー
辺境伯家の三男坊。数か月前の高熱で前世は日本人だったこと、社会人でブラック企業に勤めていたことを思い出す。どうして亡くなったのかは記憶にない。ただもう前世のように働いて働いて夢も希望もなかった日々は送らない。
もふもふと魔法の世界で楽しく生きる、この生活を絶対死守するのだと誓っている。
家族に助けられ、面倒ごとは優秀な他人に任せる主人公。でも頼られるといやとはいえない。
ざまぁや成り上がりはなく、思いつくままに好きに行動する日常生活ゆるゆるファンタジーライフのご都合主義です。
こじらせ中年の深夜の異世界転生飯テロ探訪記
陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
※コミカライズ進行中。
なんか気が付いたら目の前に神様がいた。
異世界に転生させる相手を間違えたらしい。
元の世界に戻れないと謝罪を受けたが、
代わりにどんなものでも手に入るスキルと、
どんな食材かを理解するスキルと、
まだ見ぬレシピを知るスキルの、
3つの力を付与された。
うまい飯さえ食えればそれでいい。
なんか世界の危機らしいが、俺には関係ない。
今日も楽しくぼっち飯。
──の筈が、飯にありつこうとする奴らが集まってきて、なんだか騒がしい。
やかましい。
食わせてやるから、黙って俺の飯を食え。
貰った体が、どうやら勇者様に与える筈のものだったことが分かってきたが、俺には戦う能力なんてないし、そのつもりもない。
前世同様、野菜を育てて、たまに狩猟をして、釣りを楽しんでのんびり暮らす。
最近は精霊の子株を我が子として、親バカ育児奮闘中。
更新頻度……深夜に突然うまいものが食いたくなったら。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる