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デジカメ(ふたご座)

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「はい、こっち向いて笑って!」

「もういいよ…」

そう言いながらも彼は無理に笑ってくれた。
しかし、その頬はげっそりとやつれ、落ち窪んだ瞳には哀しみが宿っていた。



「今日は検査の時間が長かったから疲れたよ。
早めに休みたいから君ももうお帰り。」

「また検査?」

「あぁ…新しく来た医師がえらく熱心でね…
……どんなに調べたって僕の病気は……」

「あ、ティッシュがなくなってきてるね。
明日持って来るね。
そうだ…帰る前にもう一枚だけ撮らせて。
もうそろそろカードが一杯になる筈だから。」

夫の暗い言葉を聞きたくなくて私は話を逸らした。
夫は、苦笑しながらもカメラの方を向いてくれて、私はティッシュの箱を元の場所に戻しながら片手でシャッターを押した。









「何、これ…」

家に戻り、撮った画像を見ていた時、私はおかしな画像を発見した。
それは最後に撮影した一枚だった。
そこには夫とは違う見知らぬ男性が写っていたのだ。

今日は病院に行ったのがいつもより少し遅くなったのと、夫があまり元気そうでなかったため二枚しか撮っていない。
なによりも昨日とはパジャマが違うから間違えようがない。
あの少し辛そうな表情の一枚と、最後の…
私はもう一度、あの見知らぬ男性の画像を見た。
白髪混じりの中年の男性で、どこか苦しそうな顔で眠っている。
何度見てもまるで見覚えのない人物だ。



(あ……)



私は、その画像にある異変をみつけた。
日付が違うのだ。
ちょうど今日から二ヶ月先の日付になっていた。



(そうだ…あの時、私、ティッシュを戻してて…
片手で撮ったから、その時にきっと日付設定のダイヤルが動いちゃったんだ…)



一つ前の画像を見ると、日付は確かに今日のものだった。

二ヶ月先の日付…見知らぬ男性…
その二つを交互に考えていた時、私の脳裏におかしな考えが浮かんだ。



(まさか…)

いやな胸騒ぎが広がる…
私は、ふとデジカメでテレビ画面を映した。
ただつけているだけのどうでも良いバラエティ番組だ。
撮ったものを再生してみると、そこには今この目で見たものとは違うものが写っていた。
CMではなく何かのドラマのようだった。
私の不安はますます大きなものとなり、今度は手元の新聞を写した。

再生したものを見て、私は愕然とした。
間違いない…
予想は確信に変わった。
そこに映し出されていたのは、手元の新聞の祭りの記事とは違う、バス事故の記事だった。
そう…このデジカメはその日付の状態を写すのだ。



つまり、二ヶ月後にはあのベッドに夫はいないということ…



私は泣き声とも悲鳴ともつかない声をあげていた。 
 
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