277 / 277
ユーロジアへ…
5
しおりを挟む
*
「リュシアン王子、おめでとうございます!」
「亜里沙様、おめでとうございます!」
ユーロジアに戻ってから数か月後、私達はついに結婚した。
国王御夫妻は、複雑なお気持ちかもしれないけれど、リュシアン様が身を固められたことについては、やはり喜んでおられるようだ。
国民たちが私たちの結婚を祝い、小さな旗を振ってくれている。
私達はそれに応えるように、バルコニーから手を振り返す。
婚礼の儀式も間違えずに済んで、私はほっと胸をなでおろした。
「亜里沙…とても綺麗だ。」
「あ、ありがとうございます。」
家族のことを想うと胸は痛むけど…
だけど、後悔はしていない。
私の取った行動が正しかったかどうかはわからないけれど…
たとえ間違っていたとしても、私には後悔はない。
愛する人と離れるのはもういやだから…
リュシアン様とは、どんなことがあっても絶対に離れない…!
「おぉ、亜里沙…あそこに…」
「まぁ…」
リュシアン様の指さす先には、大きな虹が架かっていた。
「ユーロジアでは、虹は幸せの前兆なんだ。」
「日本でもそうです。」
私達は、空にかかる虹をみつめた。
世界は全然違うけど…ユーロジアの虹も日本と同じ七つの色だ。
「リュシアン様…なにか、歌を歌っていただけませんか?」
「そうだな…それでは…」
リュシアン様は深く息を吸い込んで…
『空に輝く虹の橋よ、どうかあの子に伝えてほしい…』
低くて響きのあるリュシアン様の声に、私は耳を傾けた。
それは、旅人がある田舎の町で美しい女性に恋をして、想い悩む恋の歌だった。
「……素敵な歌ですね。」
「幼い頃に覚えた歌だ。
今日は少しばかり歌詞を変えた。」
「そうなんですか。」
私がリュシアン様にしなだれかかると、リュシアン様は私の髪を優しく撫でて下さった。
「君の髪は、猫よりも触り心地が良いな…」
リュシアン様の指の感触に、私はうっとりと目を閉じた。
(リュシアン様、私、ずっとあなたについていきます。
あの虹に誓って……)
見上げた虹の向こう側で、両親や兄さんが微笑んでいるような…そんな気がした。
~fin.
「リュシアン王子、おめでとうございます!」
「亜里沙様、おめでとうございます!」
ユーロジアに戻ってから数か月後、私達はついに結婚した。
国王御夫妻は、複雑なお気持ちかもしれないけれど、リュシアン様が身を固められたことについては、やはり喜んでおられるようだ。
国民たちが私たちの結婚を祝い、小さな旗を振ってくれている。
私達はそれに応えるように、バルコニーから手を振り返す。
婚礼の儀式も間違えずに済んで、私はほっと胸をなでおろした。
「亜里沙…とても綺麗だ。」
「あ、ありがとうございます。」
家族のことを想うと胸は痛むけど…
だけど、後悔はしていない。
私の取った行動が正しかったかどうかはわからないけれど…
たとえ間違っていたとしても、私には後悔はない。
愛する人と離れるのはもういやだから…
リュシアン様とは、どんなことがあっても絶対に離れない…!
「おぉ、亜里沙…あそこに…」
「まぁ…」
リュシアン様の指さす先には、大きな虹が架かっていた。
「ユーロジアでは、虹は幸せの前兆なんだ。」
「日本でもそうです。」
私達は、空にかかる虹をみつめた。
世界は全然違うけど…ユーロジアの虹も日本と同じ七つの色だ。
「リュシアン様…なにか、歌を歌っていただけませんか?」
「そうだな…それでは…」
リュシアン様は深く息を吸い込んで…
『空に輝く虹の橋よ、どうかあの子に伝えてほしい…』
低くて響きのあるリュシアン様の声に、私は耳を傾けた。
それは、旅人がある田舎の町で美しい女性に恋をして、想い悩む恋の歌だった。
「……素敵な歌ですね。」
「幼い頃に覚えた歌だ。
今日は少しばかり歌詞を変えた。」
「そうなんですか。」
私がリュシアン様にしなだれかかると、リュシアン様は私の髪を優しく撫でて下さった。
「君の髪は、猫よりも触り心地が良いな…」
リュシアン様の指の感触に、私はうっとりと目を閉じた。
(リュシアン様、私、ずっとあなたについていきます。
あの虹に誓って……)
見上げた虹の向こう側で、両親や兄さんが微笑んでいるような…そんな気がした。
~fin.
0
お気に入りに追加
45
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
逃げるための後宮行きでしたが、なぜか奴が皇帝になっていました
吉高 花
恋愛
◆転生&ループの中華風ファンタジー◆
第15回恋愛小説大賞「中華・後宮ラブ賞」受賞しました!ありがとうございます!
かつて散々腐れ縁だったあいつが「俺たち、もし三十になってもお互いに独身だったら、結婚するか」
なんてことを言ったから、私は密かに三十になるのを待っていた。でもそんな私たちは、仲良く一緒にトラックに轢かれてしまった。
そして転生しても奴を忘れられなかった私は、ある日奴が綺麗なお嫁さんと仲良く微笑み合っている場面を見てしまう。
なにあれ! 許せん! 私も別の男と幸せになってやる!
しかしそんな決意もむなしく私はまた、今度は馬車に轢かれて逝ってしまう。
そして二度目。なんと今度は最後の人生をループした。ならば今度は前の記憶をフルに使って今度こそ幸せになってやる!
しかし私は気づいてしまった。このままでは、また奴の幸せな姿を見ることになるのでは?
それは嫌だ絶対に嫌だ。そうだ! 後宮に行ってしまえば、奴とは会わずにすむじゃない!
そうして私は意気揚々と、女官として後宮に潜り込んだのだった。
奴が、今世では皇帝になっているとも知らずに。
※タイトル試行錯誤中なのでたまに変わります。最初のタイトルは「ループの二度目は後宮で ~逃げるための後宮でしたが、なぜか奴が皇帝になっていました~」
※設定は架空なので史実には基づいて「おりません」
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
【完結】転生したら侯爵令嬢だった~メイベル・ラッシュはかたじけない~
おてんば松尾
恋愛
侯爵令嬢のメイベル・ラッシュは、跡継ぎとして幼少期から厳しい教育を受けて育てられた。
婚約者のレイン・ウィスパーは伯爵家の次男騎士科にいる同級生だ。見目麗しく、学業の成績も良いことから、メイベルの婚約者となる。
しかし、妹のサーシャとレインは互いに愛し合っているようだった。
二人が会っているところを何度もメイベルは見かけていた。
彼は婚約者として自分を大切にしてくれているが、それ以上に妹との仲が良い。
恋人同士のように振舞う彼らとの関係にメイベルは悩まされていた。
ある日、メイベルは窓から落ちる事故に遭い、自分の中の過去の記憶がよみがえった。
それは、この世界ではない別の世界に生きていた時の記憶だった。
転生したら乙ゲーのモブでした
おかる
恋愛
主人公の転生先は何の因果か前世で妹が嵌っていた乙女ゲームの世界のモブ。
登場人物たちと距離をとりつつ学園生活を送っていたけど気づけばヒロインの残念な場面を見てしまったりとなんだかんだと物語に巻き込まれてしまう。
主人公が普通の生活を取り戻すために奮闘する物語です
本作はなろう様でも公開しています
【完結】妹ざまぁ小説の主人公に転生した。徹底的にやって差し上げます。
鏑木 うりこ
恋愛
「アンゼリカ・ザザーラン、お前との婚約を破棄させてもらう!」
ええ、わかっていますとも。私はこの瞬間の為にずっと準備をしてきましたから。
私の婚約者であったマルセル王太子に寄り添う義妹のリルファ。何もかも私が読んでいたざまぁ系小説と一緒ね。
内容を知っている私が、ざまぁしてやる側の姉に転生したって言うことはそう言うことよね?私は小説のアンゼリカほど、気弱でも大人しくもないの。
やるからには徹底的にやらせていただきますわ!
HOT1位、恋愛1位、人気1位ありがとうございます!こんなに高順位は私史上初めてでものすごく光栄です!うわーうわー!
文字数45.000ほどで2021年12月頃の完結済み中編小説となります。
お役御免の召喚巫女、失恋続きののち、年下旦那様と領地改革
リコピン
恋愛
突然、異世界へ「巫女」として召喚されたアオイ。自分の人生を奪われた理不尽に怒り嘆くが、召喚した王国の王太子や彼の側近達の説得により、巫女としての役目を受け入れた。召喚されて一年、国を護る結界を張ることに成功したアオイは巫女の任を解かれ、新たな人生を歩むこととなる。身の振り方に迷うアオイがいくつかの恋を失った後、出会ったのは年下の辺境伯セルジュだった。これは、その包容力で妻を甘やかしまくるセルジュと、夫の甘やかしに薄々気づきながらも好き勝手するアオイの仲良し夫婦による領地改革物語。
※ポップなシリアス風味です(コメディになりきれていません)
※軽度ですが、暴力(戦闘)シーンを含みます
※結果として「ざまぁ」になる人はいますが、ご期待に添えなかったらごめんなさい
悪女の指南〜媚びるのをやめたら周囲の態度が変わりました
結城芙由奈
恋愛
【何故我慢しなければならないのかしら?】
20歳の子爵家令嬢オリビエは母親の死と引き換えに生まれてきた。そのため父からは疎まれ、実の兄から憎まれている。義母からは無視され、異母妹からは馬鹿にされる日々。頼みの綱である婚約者も冷たい態度を取り、異母妹と惹かれ合っている。オリビエは少しでも受け入れてもらえるように媚を売っていたそんなある日悪女として名高い侯爵令嬢とふとしたことで知りあう。交流を深めていくうちに侯爵令嬢から諭され、自分の置かれた環境に疑問を抱くようになる。そこでオリビエは媚びるのをやめることにした。するとに周囲の環境が変化しはじめ――
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる