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押さえきれない想い

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(俺はどうかしてる…)



 相変わらず、俺はアドルフの行動を尾行し…アドルフが亜里沙の部屋に入ったのを確認した。
 今夜こそ、亜里沙はあいつに抱かれてしまうのか?
そう思ったら、扉を蹴破って部屋に押し入り、アドルフを張り倒したくなった。



だが、おかしなことに、アドルフはそう長い間亜里沙の部屋に居座ることもなく、また自分の部屋に戻ったのだ。
わからない…あいつが何を考えているのか、まるでわからない。



 俺は、庭に忍び込んだ。
 亜里沙の寝室のすぐ傍だ。
 時はまだそれほど深い夜ではない。
 部屋の中は明るく、そっとのぞくと、椅子に腰かけて本を読む亜里沙の姿が見えた。



 (亜里沙…)



この窓を押し開け、部屋の中に入ることは容易い。
そして、そのまま、亜里沙と体を重ねたら…
アドルフはどうするだろう?
 怒って俺を刺し殺すか?
それとも、そんな汚れた女はいらないと、俺に亜里沙を返してくれるだろうか?



 話したい…
とにかく、亜里沙と話がしたい…!



その気持ちが押さえられなくなって…俺は窓越しに声を押さえて亜里沙の名を呼んだ。



 亜里沙は、驚いた様子で部屋の中を見渡す。



 「亜里沙、窓だ。」

 亜里沙の視線が俺の視線をとらえた。



 「リュシアン様…どうなさったんですか?」

 窓を開け、亜里沙は俺に囁いた。



 「ちょっと出られないか?」

 「え…」

 「おかしな真似はしない。
ただ、少し話したいだけだ。」

 「……わかりました。
では、メアリーさん達に今日は早めに横になると言って来ます。」

それが本当なのか、もしくは俺がこんな所に来たことを告げるためなのか…



俺は、亜里沙が戻って来るのを、不安な気持ちで待ち続けた。
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