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絶望の王子

side アドルフ

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 「おぉ、なんと凛々しいお姿か…」



 婚礼の衣装が出来上がった。
 真っ白なシャルトの生地は、身体に吸い付くように滑らかだ。
 姿見に映る私の姿が、まるで他人のように思えた。
 本来ならば、この衣装を着る者の心は幸せで満たされるであろう…
だが、私の心は、暗い闇に閉ざされている。
これから先の生活のことを思うと、苦痛で仕方がない。



しかし、ここまで来たらもう逃れることは出来ない。
 準備はすべて整った。
 婚礼は、もう来週なのだ。



 (アリシア……)



 私は衝動的に、鏡に向かって椅子を投げつけていた。
 乾いた音を立てて、姿見が割れた。



 「アドルフ様!」



 使用人達が、慌てて私の元に駆け寄った。
 鏡に映る私はひび割れているのに、当の私には何の支障もない。
そんなこと、当たり前だ。
 私は、腹の底から笑った。
 愚かな私を笑い飛ばした。
 呆然としている使用人達の前で、私は気が狂ったように笑い続けた。
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