あれこれ短編集

ルカ(聖夜月ルカ)

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星屑の欠片

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(そんなことないよ…その証拠に、僕はもう気の遠くなるほどここで生きてる。
ここへ来る途中に、炭焼き小屋があっただろ?
あそこにまだあんなものがなかったずっと昔から僕はここにいるんだ。)

 「炭焼き小屋?
あぁ、そういえば、何かそんなのがあったな。
ずいぶんと古そうだったけど…」

 (あそこの主人が結婚し、子供が生まれ、その子がよくここへ来ては僕のバケツや炭を替えてくれたりしたんだけど、もう何年も前に死んだ筈だ…)

そういう雪だるまの眉毛の炭は、片方だけが下がっていた。



 「子供が死んじまったのか?」

 (あ…あぁ、子供って言ってももう老人だよ。
 最後にここに来た時に、ここまで登って来るのは大変だってこぼしてから…)

 「おまえ、そんな長い間、ここに…」

 (そうだよ。
だから、僕は星屑の力でこんな風になったんだ。
 君が来てくれて、僕、本当に嬉しいよ。
 人と会うのはすごく久しぶりだし、こんな風に話が出来たのは初めてなんだ!)

 「そうか…おまえも寂しいんだな。
これからは俺がここにいてやるよ。
 誰かが俺をみつけるまでずっとな。」

 (ケヴィン、馬鹿なことを言うな!
 君は戻るんだ!)

 「おまえまでそんなこと言うなよ!
 俺は…俺はもう駄目なんだ…」

 (ケヴィン…)

 「おまえの言いたいことはわかってるさ!
 『そんなことをしたら、ジョゼットが悲しむ』
 『あんたが精一杯生きることが、ジョゼットのため』
 皆、そう言うんだ。
だから、俺も頑張った。
 彼女のことを忘れようとして…前向きに生きようとして…精一杯頑張った。
でも…もう限界だ…
俺には、彼女のことを忘れることも、前向きに生きることも出来ない!
だいたい、なんでそんなことがわかるんだ?
ジョゼットは寂しがり屋だった…もしかしたら、俺が来るのを毎日待ってるかもしれないじゃないか。
 寂しくてたまらないって泣いてるかもしれないじゃないか。
なぜ、皆、そうは考えないんだ?」

そう言って、ケヴィンは唇を噛み締めた。
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