あれこれ短編集

ルカ(聖夜月ルカ)

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タイトル未定

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 「う…うぅ……」

 僕の顔を心配そうにのぞき込む大きな瞳と目が合った。
 静かな湖を思わせる澄んだ水色の瞳だ。



 「気が付いたのか!?」

 「え…えっと…ここは……え!?」

 良く見ると、その子の顔は普通とちょっと違っていた。
 飛び切りの美形だってことだけじゃなく、色がとても白くて、髪は白に近い銀色で腰まで伸びてて、耳が大きく尖っている。
そう…ファンタジー映画で見たエルフみたいな感じだ。



 「あの……えっと……」

 僕は、そのことで混乱し、しどろもどろになってしまった。



 「心配はいらない。
 骨は折れていたが、手当てをしたからそのうち良くなる。」

 「え……?」

そう言われて、僕は思い出した。
そうだ、僕はあの時、崖かどこかから落ちて…



(いたっ…)

 体のあちこちに痛みが走る。



 「気分は悪くないか?」

 「は、はい、大丈夫です。
あ、あの…助けていただいて、どうもありがとうございます。」

 「いや…たまたま、薬草を摘みに行ってたんだ。
そしたら、崖の上からなにかが落ちて来て…
びっくりしたよ。
しかも落ちてきたのは人間だった。
そもそも、この山に立ち入る者はまずいないはずなのに…」

 「そ、そうだったんですね。」



そうだよな。
こんな険しい山だもの。
たいていは迂回して行くだろうな。



 部屋の中は、お城とは大違いの狭くて質素な作りだった。
 広さ的には、僕の部屋と同じくらいかな。
 家具もあんまりない。
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