あれこれ短編集

ルカ(聖夜月ルカ)

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三番目の夢

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 「悟…良かったな…
明日香さんと会えて、嬉しいだろ?」

その後、私は、悟のお墓に連れて行ってもらった。
まさかこんな形で再会するなんて…考えたこともなかった。



 灰色の墓石を見ても、まだどこか実感出来ない。
 悟がもうこの世にいないことが…
なのに、両手を合わせて目を閉じたら、また涙が溢れて来た。



ここに悟がいる…
大好きだった悟がここに…



「悟…やっぱり20年なんて長過ぎたんだよ!
あんたが私の言う事を聞かなかったから…
せめて10年にしてたら、会えたのに…
夢よりもあんたの方が大切だったのに…!」

 墓石に向かって、私は叫んだ。
 悲しくて、苦しくて、悔しくて……
今更、どうすることも出来ないってわかってるから、ただ涙だけが流れ続ける。



 後悔しかなかった。
もしも、あの時、私が、悟の言うことに反対していたら…
20年も待たずに、悟の実家に連絡していたら…
そんなことばかり考えては自分を責めた。



 「明日香さん、もう泣かないで。」

 「だって……」

どうして悟は死ななきゃいけなかったんだろう?
 才能は私よりずっとあったはずなのに夢を叶えられず、こんなに若くで死ななきゃいけないなんて、可哀想過ぎる。
 悟だって悔しくて成仏出来ないんじゃないだろうか?



 「悟は幸せ者ですよ。」

 「どうして!?悟は、夢も叶えられなかった…
しかも、若くで死んでしまった…幸せなはずないじゃない!」

 私の感情的な言葉に、優君は、ゆっくりと首を振る。



 「こうして君が来てくれたことで、悟はすごく喜んでると思う。
 20年経っても君の気持ちが変わらなかったこと…あいつは絶対に喜んでる…きっと、それがあいつの最期の夢だったと思うんだ。」

そう言って、優君は涙を流しながら微笑んだ。



 (最期の……夢……)

その顔を見ていたら、今目の前にいるのが優君だということを一瞬忘れてしまった。
 思わず抱き着いてしまいそうになって、直前ではっと我に返った。



 立ち直るには長い時間が必要だろう。
これからも辛い日々は続くと思うけど…



それでも、私は、これからも生きていかなくてはならない。



 (悟……私、多分、これからもあんたのことが好きだと思う。
 思ってたより、一途なんだよね、私……痛い女だって引かないでよね…)



 涙は止まらないけど、でも、私…頑張るから…



優君の中にいる悟の面影をみつめながら、私は、悟にそう誓った。

 
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