あれこれ短編集

三番目の夢

９

「それで、明日香…夢は叶えられたのか？」

 「え？う…うん。
まぁね。
 今、サロンに所属してるんだ。」

 「そうなのか。じゃあ、芸能人のメイクとかもしてるのか？」

 「うん…今は、近藤ルナさんとか、如月春香さんとかを担当してるよ。」

 「すごいじゃないか！良かったなぁ…
 ……本当に良かった。」

 悟の瞳が濡れていた。
それは意外なことで…私の頭には悪い予感が浮かんでた。



 「……悟はどうなの？
ダンサーにはなれたの？」

 悟はゆっくりと首を振った。
 悪い予感は当たってしまった。



 「ダンサーへの道は、俺が思ってたよりもずっと厳しいものだった。
 俺も一生懸命頑張ったんだけど…残念ながら無理だったよ。」

 「……そうなんだ。
じゃあ、今は何してるの？」

 「うん…実は店やってるんだ。
イタリアンの店。ま、小さい店なんだけどさ。」

 「へぇ…すごいじゃない。」

 「……これ。」



 悟は、スマホを取り出し、私の目の前に差し出した。
 店の前で微笑んでいる悟の画像だった。



 「良い感じのお店じゃない。」

 「だろ？それと……」



 悟は、スマホを持ち、再び、私の前に差し出した。



 （えっ！？）



そこに映っていたのは、悟と女性と小さな女の子が、顔を寄せる画像だった。