あれこれ短編集

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
311 / 406
三番目の夢

しおりを挟む
「よぅっ!久しぶり!」

 悟は、まるで先月会ったかのような軽い挨拶をする。



 「ひ、久しぶりだね、元気だった?」

 「まぁな。おまえも元気そうだな。
でも…老けたな。」

 「酷い!悟だって……」

ううん、悟は老けてなんていない。
むしろ、あの頃より落ち着きが出て格好良くなった。



 「……嘘だよ。
 老けてなんていない。
……すごく綺麗になった。」

 「悟……」

まっすぐにみつめられて、まるで少女のように胸がときめいた。
 私はもうそんなお世辞で喜ぶような年じゃないのに…



「寒いから、どこかでお茶でも飲むか?」

 「うん…そうだね。」



 私達は、すぐ傍の小さなカフェに入った。
 20年前にはなかったお店だ。



ふたりで並んで歩く間も、なんだか可笑しい程、私は浮かれていた。
 悟と会えたことでこんなにも胸が弾むなんて、私…本当に馬鹿みたい。



 私って、本当は一途な女だったんだ。
 今更にしてそんなことに気付き、なんだか恥ずかしくなる。



 (38歳の一途な女なんて、ただの痛い女じゃないの…)



そんな悪態を自分自身に吐いてみる。
しおりを挟む

処理中です...