あれこれ短編集

ルカ(聖夜月ルカ)

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かぼちゃからの贈り物

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「さ~て、どれにしょうかねぇ…」

 腰の曲がったおばあさんが、目を皿のようにして畑の中を歩きます。
そこは見渡す限りの広大なかぼちゃ畑です。
ちょうど、かぼちゃは採り頃で、どのかぼちゃも大きく立派に育っています。



 「これなんか、良さそうだね…」

 「ま、待ってよ!おばあさん!」

 「おやまぁ、かぼちゃが喋ったよ!」

 「そんなに驚かないでよ。
ここは魔女のかぼちゃ畑なんだ、かぼちゃが喋ることくらい、不思議でも何でもないだろう?」

 「そりゃあそうかもしれないが、かぼちゃが喋ったのは、おまえさんが初めてだよ。」

 魔法使いのお婆さんはそう言って、かぼちゃをしげしげとみつめます。



 「そうなの?それじゃあ、おばあさん…せっかくの機会だ。
 僕の願いを聞いてよ。」

 「おまえさんの願いじゃと…?」

おばあさんは、しわがれた目でじろりとかぼちゃをみつめました。



 「うん、中身をくりぬいてランタンにされる前に、ハロウィンがどんなものなのか見てみたいんだ。」

 「ハロウィンを…?お前さんが思うほど、面白いものじゃあないぞ。」

 「それでも良いんだ。僕はこの畑しか知らない。
ただ、この時期、みんながハロウィンを楽しみにしてることは、道を通る人達の話で知ってるけど、どんな風に楽しいのかはわからない。
だから、実際に体験してみたいんだ。」

 「やれやれ…手のかかるかぼちゃだね。
ちょっとくらい遊びに行くのはかまわんが、じゃが、そのままではあまりにも不自然じゃ。
どれ……」

おばあさんは畑に座り込み、力強い手さばきで、かぼちゃの中身をくりぬき、そこに三角な目を二つと、大きなぎざぎざの口をくりぬきました。



 「なんだよ、やっぱりランタンにするのかい?」

 「そうじゃないよ。ちょいとお待ち。」

おばあさんが呪文を唱えると、かぼちゃの顔はふわりと浮き、その下にオレンジ色のマントがはためきました。
マントには大きなポケットがついています。
かぼちゃの頭には三角の帽子もちょこんと乗っていました。



 「ようし、これで大丈夫だ。
ただ、言っておくが、マントは絶対にはずしちゃいけないよ。
マントをはずした時、この魔法は解ける。
おまえさんはただのかぼちゃに戻るんだ。」

 「わかったよ!
ありがとう!
おばあさん!」
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