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第二ボタン
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「……ありませんね。」
しばらく探してみたけど、ボタンはみつからなかった。
男性は私の言葉に返事もせず、ただ黙々とボタンを探し続けていた。
その表情は、どこか異常とも思える程、真剣で……
「あの…いつごろなくされたんですか?」
「……忘れてしまいました。」
「え…そ、そんなに前のことなんですか?」
私が驚いてそう言うと、男性は背を伸ばし、私の方を切ない瞳でじっとみつめた。
「どうもありがとうございました。
あとは、自分一人で探しますから……」
確かに、そんな前になくしたボタン…しかもずっと探してて見つからないものなら、きっとこのあたりにはないのだろうと思えた。
時間も遅くなって来たことだし、少し心配にもなっていた。
でも、男性をそのまま見過ごして帰るのも、なんだか胸が痛む。
(あっ…そうだ…!)
私は着ていたカーディガンのボタンをぐるぐる回して、糸をねじきった。
「あ、あの…良かったら、これ……」
私はねじきったそのボタンを男性に差し出した。
「えっ!!」
男性の驚きは、予想外のものだった。
たかがボタンごときで、なぜそんなに大げさに驚くのか、私にはまるでわからなかった。
「今、気付いたんですけど、けっこう似た感じですし…
ボタンが見つかるまで、良かったらそれを使って下さい。」
「……良いのですか?こんな貴重なものを本当にいただいて良いのですか?」
「は、はい、家に予備のボタンがありますから。」
それは、咄嗟に吐いた嘘だった。
そうでも言わないと、男性がボタンを受け取ってくれないかもしれないから。
「ど…どうもありがとうございます!」
男性は瞳を潤ませ、私のボタンを受け取ると、深々と頭を下げた。
「あ、あの…そんなにお気になさらないで…」
「由香~~!」
「あ、おじいちゃん…」
不意に聞こえて来たおじいちゃんの声に思わず振り向き、そして、もう一度男性の方に向き直った時、そこに男性の姿はなかった。
(……え?)
あたりには人の気配はなく、ただそよそよと吹く風の音が静かに聞こえるだけだった。
「……ありませんね。」
しばらく探してみたけど、ボタンはみつからなかった。
男性は私の言葉に返事もせず、ただ黙々とボタンを探し続けていた。
その表情は、どこか異常とも思える程、真剣で……
「あの…いつごろなくされたんですか?」
「……忘れてしまいました。」
「え…そ、そんなに前のことなんですか?」
私が驚いてそう言うと、男性は背を伸ばし、私の方を切ない瞳でじっとみつめた。
「どうもありがとうございました。
あとは、自分一人で探しますから……」
確かに、そんな前になくしたボタン…しかもずっと探してて見つからないものなら、きっとこのあたりにはないのだろうと思えた。
時間も遅くなって来たことだし、少し心配にもなっていた。
でも、男性をそのまま見過ごして帰るのも、なんだか胸が痛む。
(あっ…そうだ…!)
私は着ていたカーディガンのボタンをぐるぐる回して、糸をねじきった。
「あ、あの…良かったら、これ……」
私はねじきったそのボタンを男性に差し出した。
「えっ!!」
男性の驚きは、予想外のものだった。
たかがボタンごときで、なぜそんなに大げさに驚くのか、私にはまるでわからなかった。
「今、気付いたんですけど、けっこう似た感じですし…
ボタンが見つかるまで、良かったらそれを使って下さい。」
「……良いのですか?こんな貴重なものを本当にいただいて良いのですか?」
「は、はい、家に予備のボタンがありますから。」
それは、咄嗟に吐いた嘘だった。
そうでも言わないと、男性がボタンを受け取ってくれないかもしれないから。
「ど…どうもありがとうございます!」
男性は瞳を潤ませ、私のボタンを受け取ると、深々と頭を下げた。
「あ、あの…そんなにお気になさらないで…」
「由香~~!」
「あ、おじいちゃん…」
不意に聞こえて来たおじいちゃんの声に思わず振り向き、そして、もう一度男性の方に向き直った時、そこに男性の姿はなかった。
(……え?)
あたりには人の気配はなく、ただそよそよと吹く風の音が静かに聞こえるだけだった。
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