あれこれ短編集

ルカ(聖夜月ルカ)

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クリスマスプレゼントは靴下に

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まぁ…つまらない嘘を吐いてしまったことには、なんとも言えない気持ちを感じてたけど、かといって、前島におかしな誤解をされたままなんてやっぱりいやだもん。 

 私の好きなタイプは、前島とは全く違う……
大人で穏やかな笑顔で微笑む人で…



そんなことを考えると、自然とあの人の顔が頭に浮かぶ。 
もう吹っ切ったはずなのに…どうして!? 

いやだな…私ってば、本当に諦めが悪過ぎる。 

いくら私が想っても、あの人は私のことなんてなんとも想ってない。 
……そりゃあ、気持ち悪い奴だとは思ってるだろうけど。

第一、私はあの人のことを何も知らない。
年も名前も住んでる所も…
それは、つまり、探しようもないってことで… 

ま、みつかったところでどうにもならないわけだし、その上、みつかるはずもないんだから、そうなりゃ、やっぱり諦めるしかない。 



(引きずるなんて、女々しいぞ!)



私は自分にそう言い聞かせ、喝を入れた。
私は女ではあるけど、普段はけっこう男らしいんだ。
じめじめしてるなんて似合わない!
そう思って、あらためて彼のことは頭から消し去った。



ところが、数日経った頃……



「中井さん、聞きましたよ!」



坂本さんが意味ありげな顔をして、私に声をかけてきた。 



「聞いた……って、何を?」

坂本さん達はにやにやと意味ありげな笑みを浮かべてる。



「中井さん、彼氏さんがいらっしゃるんですってね!」

「……え?」



……前島だ。
 前島が、彼女達に話したんだろう。



「中井さんって、いつもバリバリ働いてらっしゃるから、彼氏さんともあんまり会えないんじゃないですか?」

「う、うん、まぁね。」

「でも、イヴは会われるんでしょう?
今度のイヴはお休みですもんね!」



二人は相変わらずおかしな具合ににやにやしてる。
きっと、私が話したことを信じてないんだ。
 嘘だと思ってるから、わざとこんなことを言ってくるんだ。 



「私は休みだけど、彼は仕事だから、きっと無理だわ。」

「えぇーっ!聖夜に彼女さんを一人でほっとくなんて、そんなの酷~い~!」

 坂本さんが大げさに首を振る。


「私達、別にクリスチャンじゃないから、クリスマスはそんなに重要な日ってわけじゃないもの。」

「また、そんなことを~…
クリスマスは、宗教に関係なく、大切な人と一緒に過ごす日じゃないですか!」

「そうよねぇ~」

坂本さんと田中さんはそう言って、顔を見合わせて頷き合う。 
 
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