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クリスマスプレゼントは靴下に
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*
「もうっ!あんた!なんで先週と同じ失敗するわけ!?
私がこないだ言ったこと、もう忘れたの?」
「……さーせん。」
前島は無表情でそう言うと、面倒臭そうにぼりぼりと頭をかく。
反省の様子なんて、欠片ほどもない。
仮にも上司の私にこんな口の利き方する子だもの。
小言なんて言うだけ無駄だってことはわかってる。
だからって、無視出来る?
そんなことしたら、この子のためにもならない。
ちょっと注意しただけで辞めてしまう子が多い中、やめなかっただけでもこの子はまだ偉いんだ。
そう自分に言い聞かせ、私は注意を続けた。
「……とにかく、すぐにやり直してちょうだい。」
「了解っす~」
チャラい返事にむっとする気持ちを必死に堪え、私は平静を装って席に戻った。
*
「ねぇ、最近の中井のおばば、なんだかヒステリーが酷いよね。」
(お、おばば…?)
お昼休みのトイレ……
個室から出ようとした時、たまたま聞こえて来た声に、私は出るに出られない状態に陥ってしまった。
中井は私しかいないから、『中井のおばば』なる者は私のことに間違いない。
「そうよねぇ。
今朝のお説教……ねちっこいったらありゃしない。
前島君も災難だよねぇ……」
声の主が誰なのかもすぐにわかった。
坂本さんと田中さんだ。
私に対してもとても従順で、ふだんから真面目な子達だと思ってただけに、「おばば」呼ばわりはちょっとしたショックだった。
「ねぇねぇ、もしかして、中井のおばば、前島君に気があるんじゃないの?」
「ええーーーっ!あの年で??
やだぁ…気持ち悪い!」
「気持ち悪くてもあるってば!
年取ると、ああいうやんちゃな感じの男の子が可愛く見えるみたいだよ。
それでなくても、前島君、けっこう格好良いしぃ……」
「で、その前島君が全然自分になびかないから、苛々して八つ当たり……と。」
信じられない。
あの馬鹿前島のどこが格好良いんだ?
最近の若い子の、美的感覚って全くわからない。
そんなことよりも、「気持ち悪い」って何よ!?
それに、私が、前島に振り向いてもらえないから、苛々してるだと……?
よくもそんな馬鹿げたことを思いつくもんだ。
「おあいにくさま!」
私はドアをばんと景気良く開けて外へ出た。
「な、中井さん!」
二人は、まるで亡霊でも見たかのような顔をして私をみつめる。
「あの前島が格好良いなんて、あなた達、相当趣味が悪いのね。
おばばはああいう男には少しもときめかないわ。
知性の欠片もないような男は、お呼びじゃないの!」
固まったままの二人にそう言い残すと、私はトイレを後にした。
「もうっ!あんた!なんで先週と同じ失敗するわけ!?
私がこないだ言ったこと、もう忘れたの?」
「……さーせん。」
前島は無表情でそう言うと、面倒臭そうにぼりぼりと頭をかく。
反省の様子なんて、欠片ほどもない。
仮にも上司の私にこんな口の利き方する子だもの。
小言なんて言うだけ無駄だってことはわかってる。
だからって、無視出来る?
そんなことしたら、この子のためにもならない。
ちょっと注意しただけで辞めてしまう子が多い中、やめなかっただけでもこの子はまだ偉いんだ。
そう自分に言い聞かせ、私は注意を続けた。
「……とにかく、すぐにやり直してちょうだい。」
「了解っす~」
チャラい返事にむっとする気持ちを必死に堪え、私は平静を装って席に戻った。
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「ねぇ、最近の中井のおばば、なんだかヒステリーが酷いよね。」
(お、おばば…?)
お昼休みのトイレ……
個室から出ようとした時、たまたま聞こえて来た声に、私は出るに出られない状態に陥ってしまった。
中井は私しかいないから、『中井のおばば』なる者は私のことに間違いない。
「そうよねぇ。
今朝のお説教……ねちっこいったらありゃしない。
前島君も災難だよねぇ……」
声の主が誰なのかもすぐにわかった。
坂本さんと田中さんだ。
私に対してもとても従順で、ふだんから真面目な子達だと思ってただけに、「おばば」呼ばわりはちょっとしたショックだった。
「ねぇねぇ、もしかして、中井のおばば、前島君に気があるんじゃないの?」
「ええーーーっ!あの年で??
やだぁ…気持ち悪い!」
「気持ち悪くてもあるってば!
年取ると、ああいうやんちゃな感じの男の子が可愛く見えるみたいだよ。
それでなくても、前島君、けっこう格好良いしぃ……」
「で、その前島君が全然自分になびかないから、苛々して八つ当たり……と。」
信じられない。
あの馬鹿前島のどこが格好良いんだ?
最近の若い子の、美的感覚って全くわからない。
そんなことよりも、「気持ち悪い」って何よ!?
それに、私が、前島に振り向いてもらえないから、苛々してるだと……?
よくもそんな馬鹿げたことを思いつくもんだ。
「おあいにくさま!」
私はドアをばんと景気良く開けて外へ出た。
「な、中井さん!」
二人は、まるで亡霊でも見たかのような顔をして私をみつめる。
「あの前島が格好良いなんて、あなた達、相当趣味が悪いのね。
おばばはああいう男には少しもときめかないわ。
知性の欠片もないような男は、お呼びじゃないの!」
固まったままの二人にそう言い残すと、私はトイレを後にした。
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