あれこれ短編集

ルカ(聖夜月ルカ)

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子鬼と姫

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『ひっ!』

「よくも私の弟のことを悪く言ってくれたわね!」

ジョセフィーヌはフェアリーを睨みつけた。



『あなた…私のことが見えるの?』

「ええ、しっかりと見えてるわよ。
頭の悪い妖精さん。」

『そんな…おかしいわ。
私達フェアリーは心の綺麗な人にしか見えないはずなのに…』

「まぁ、ずいぶんな言い方ね!
あなたなんて、どこかに行っておしまいなさい!」

ジョセフィーヌが振り上げた両手に驚いて、フェアリーは森の奥へものすごいスピードで飛び去った。



「そろそろ帰るわよ。」

ジョセフィーヌはなにもなかったようにそう言ってオイラを肩の上に乗せた。



『あ…あの、ジョセフィーヌ…』

「…なによ。」

『……あの……かばってくれてありがとう。』

「……馬鹿じゃないの?
私はなにもかばってなんかいないわ。
あなたは醜くなんかないからそう言っただけよ。」

そう…ジョセフィーヌはいつもこんな言い方をする。



「私こそありがとう。」

『え…?今、なんて?』

「私はなにも言ってないわ。」

ジョセフィーヌは、そう言ったきりそのまま前を向いてずんずん歩いて行く。



『そっか…』

オイラはそう言ったけど、本当はしっかり聞こえてた。



ジョセフィーヌの本当のキモチ…



~fin

 
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